ユージン・バートン・イーリー

ユージン・バートン・イーリー：航空母艦の先駆者

ユージン・バートン・イーリー（Eugene Burton Ely、1886年10月21日 - 1911年10月19日）は、アメリカ合衆国における航空の黎明期に活躍したパイロットです。彼は、世界で初めて艦船から飛行機を発艦させ、さらに艦船への着艦をも成功させた人物として、航空史にその名を刻んでいます。

生い立ちと初期の経歴

アイオワ州ウィリアムバーグで生まれたイーリーは、ダヴェンポートで育ちました。アイオワ州立大学を卒業後、サンフランシスコに移り住み、自動車の販売やレースに情熱を注ぎました。1910年初頭にはオレゴン州へ拠点を移し、E.H.ウィーム(E. Henry Wemme)のもとでセールスマンとして働き始めます。そこで、ウィームが販売権を有していたカーチス複葉機を操縦し、不慮の事故で機体を破損させてしまいます。しかし、この事故を機に、イーリーは自ら事故機を購入し、数ヶ月をかけて修理することで、飛行機の操縦技術を習得していきました。

航空の世界へ

ポートランド周辺で飛行を重ねたイーリーは、ウィニペグで開催された展示飛行会に参加し、その腕前を披露しました。1910年6月にはミネソタ州を訪れ、航空界のパイオニアであるグレン・カーティスと出会い、その才能を見出され、カーチスの下で働くことになります。

歴史的な艦上発着艦

1910年10月、イーリーはカーティスと共に、アメリカ海軍のワシントン・チャンバースとの会合を持ち、艦船からの飛行機発艦実験の実施について協議しました。そして、1910年11月14日、軽巡洋艦バーミングハムの前甲板に設けられた特設の飛行甲板から、カーチス モデルDを用いて発艦を敢行し、世界で初めて艦船からの飛行機発艦に成功しました。この時、発艦後には陸上へ着陸しています。

さらに2ヶ月後の1911年1月18日には、ヒュー・ロビンソンが考案した着艦フック（両端に砂袋をつけた針金を飛行甲板上に張り、飛行機の脚に取り付けたフックを針金に引っ掛けて着艦する方式）を使用し、サンフランシスコ湾に停泊中の装甲巡洋艦ペンシルベニアの飛行甲板への着艦に挑み、世界で初めて艦船への飛行機着艦を成功させました。

これらのイーリーによる発着艦実験は、艦船上での飛行機運用を可能にすることを実証し、後の航空母艦へと繋がる礎を築いたという点で、非常に重要な意義を持っています。

突然の死と栄誉

その後も飛行ショーへの参加を続けたイーリーでしたが、1911年10月19日、ジョージア州メイコンでの飛行中に事故に遭い、24歳という若さで亡くなりました。彼の死後、1933年には、フランクリン・ルーズベルト大統領から、海軍航空への多大な貢献を称えられ、殊勲飛行十字章が贈られました。

ユージン・バートン・イーリーの功績は、航空母艦という新たな艦船の形を生み出し、現代の海軍戦略に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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