ヨツバシオガマ

ヨツバシオガマ（四葉塩釜）

学名： Pedicularis japonica

ヨツバシオガマは、ゴマノハグサ科（またはAPG分類体系でハナシノブ科などに移されたが、旧分類ではゴマノハグサ科に属していた）シオガマギク属に分類される高山性の多年草です。日本の高山帯を代表する植物の一つであり、北海道から本州中部地方のより北側の山岳地帯にかけて分布しています。同じシオガマギク属の植物の中では、比較的目にする機会が多い種類と言えるでしょう。

生育環境は、同属のミヤマシオガマなどが岩場や砂礫地を好むのとは対照的に、湿った場所、特に高山帯の湿原や湿り気の多い草地に多く見られます。草丈は通常20センチメートルから50センチメートルほどに成長します。

和名の「ヨツバシオガマ」は、その特徴的な葉のつき方に由来します。茎のそれぞれの節から、まるでシダの葉のように細かく切れ込んだ葉が、四枚ずつ輪になって生える様子からこの名がつけられました。この四枚の葉の輪生は、本種を見分ける際の手がかりとなります。

開花期は夏の短い期間、概ね6月から8月にかけてです。花は薄紫色をしており、太く短い花弁が特徴的です。この花が茎を取り巻くように、いくつかの段になって輪生する形で咲きます。その姿は、他のシオガマギク属の花とは一線を画すユニークなものです。

過去には、本種はエゾヨツバシオガマ（Pedicularis chamissonis）の変種として扱われていた時期がありました。しかし、その後の詳細な比較研究によって、エゾヨツバシオガマとは明確に異なる独立した種であるとの結論に至り、現在では別種として分類されています。

なお、八甲田山などで見られる大型の個体は、ハッコウダシオガマやキタヨツバシオガマと呼ばれることもありますが、これは形態的な違いに基づくものであり、厳密な分類学上の区別が確立されているわけではありません。

エゾヨツバシオガマの変種として、ヨツバシオガマ以外にもいくつかの分類群が知られています。その中でも代表的なものに、クチバシシオガマとレブンシオガマがあります。これらの分類群の正確な位置付けについては、現在もさらなる研究が必要とされています。

クチバシシオガマ（Pedicularis chamissonis var. longirostrata）は、ヨツバシオガマの主な分布域よりもやや南寄りの、中部地方南部から関東地方北部の高山帯に生育します。その名の通り、花の上部が細長く伸びて嘴（くちばし）のような形をしているのが特徴です。

レブンシオガマ（Pedicularis chamissonis var. rebunensis）は、北海道の礼文島に固有の分類群です。ヨツバシオガマの葉が通常4枚輪生するのに対し、レブンシオガマの葉は5枚または6枚が輪生することが多く、また植物体全体がより大きく、壮大な姿になる傾向があります。花期は6月から7月頃で、薄紫色の花が数段から時には十数段にも重なって咲き、非常に見応えがあります。

これらの関連する分類群との比較を通じて、ヨツバシオガマの特徴や進化的な背景への理解が深まります。日本の高山植物の多様性を示す一例として、ヨツバシオガマとその仲間たちは植物愛好家にとって魅力的な存在であり続けています。

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