ヨハネス・ド・サクロボスコ

ヨハネス・ド・サクロボスコ（Johannes de Sacrobosco, 1195年頃 - 1236年頃）は、イギリス出身の著名な学者であり天文学者です。彼はパリ大学で数学と哲学を教鞭を執り、中世天文学の重要なテキストである『天球論』(Tractatus de Sphaera)を著しました。

サクロボスコという名前は、ラテン語で'holy wood'を意味し、彼の出身地であるハリファックス('Halifax')に由来するとされていますが、この説には異論も存在します。彼はオクスフォード大学で学んだ後、1221年6月からパリ大学で学び始めました。その後、パリ大学で数学を教え、1230年頃に『天球論』を出版しました。この書物は天動説宇宙論のテキストとして、その後4世紀にわたって西ヨーロッパの学生たちの間で広く用いられました。

『天球論』は、地球を中心とした宇宙観を詳細に解説し、天体の運行や宇宙の構造について包括的に論じたもので、当時の天文学教育において中心的な役割を果たしました。サクロボスコの著作は、天文学の基礎知識を広める上で大きな貢献を果たし、後の天文学者たちに多大な影響を与えました。

数学の分野においても、サクロボスコは重要な業績を残しています。『記数方論』(Tractatus de Arte Numerandi)や『アルゴリスムス』(Algorismus)は、インド・アラビアの算術法を解説したテキストとして広く用いられました。これらの著作を通じて、彼は新しい計算法をヨーロッパに導入し、数学の発展に貢献しました。

さらに、サクロボスコは暦学にも関心を持ち、『暦法論』(De Anni Ratione)において、当時の暦であったユリウス暦のずれを指摘しました。彼は、ユリウス暦が228年ごとに1日の調整が必要であることを示し、暦の正確性を向上させるための提言を行いました。

サクロボスコはパリで亡くなりましたが、彼の著作は後世にまで大きな影響を与え続けました。『天球論』をはじめとする彼の著作は、中世ヨーロッパの天文学、数学、暦学の発展に大きく貢献し、その知的遺産は今日においても高く評価されています。

著作
Iohannes de Sacrobosco (1949) [1230年頃]. The Sphere of Sacrobosco and its commentators. (Lynn Thorndike訳). University of Chicago Press.
Algorismus または De Arte Numerandi：1490年頃に出版。1517年にウィーンで出版。1521年または1522年にクラクフで出版。1523年にヴェニスで出版。
De Anni Ratione または De Computo Ecclesiastico：1538年頃・1550年・1572年にパリで出版。

関連項目
12世紀生まれの天文学者

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