ヨハン・ジモン・ヘルムシュテット

ヨハン・ジモン・ヘルムシュテット

ドイツのクラリネット奏者（1778-1846）。バート・ランゲンザルツァに生まれ、ゾンダースハウゼンで没した。超絶技巧を持つヴィルトゥオーゾとしてハインリヒ・ヨーゼフ・ベールマンと並び称され、作曲家ルイ・シュポーアとの深い交流で知られる。また、クラリネットの楽器改良にも貢献した人物である。

生涯

ヘルムシュテットは、クーアザクセンの軍楽隊長の息子として誕生した。青年期は軍人子弟学院で過ごし、1799年に父の軍楽隊に入隊。ドレスデン滞在中にクラリネット奏者として才能を開花させ、フランツ・タウシュに師事したとも言われる。

1801年、クラリネットを愛好するシュヴァルツブルク＝ゾンダースハウゼン侯ギュンター・フリードリヒ・カール1世と出会い、1802年には侯爵の招聘によりゾンダースハウゼンの近衛楽隊に入団した。1803年には宮廷薬剤師の娘と結婚し、ゾンダースハウゼンに定住。楽団員、ソリストとして精力的に活動し、1810年には音楽監督、1824年には宮廷楽長に昇進した。楽団が1835年に管弦楽団に再編成された後も、1839年の退職までその職を務めた。

1841年8月を最後に演奏活動から引退。1846年、過度な練習による喉の疾患が原因で死去したと伝えられている。

演奏活動と評価

ヘルムシュテットはドイツ各地で演奏し、その超絶技巧と豊かな音色で高い人気を博した。当時のドイツクラリネット界において、ベールマンと並ぶ双璧と見なされた。ゾンダースハウゼン侯は「現代における最も偉大なクラリネットの名手」と称賛し、ゲーテもその演奏を高く評価した。

彼の最も有名な交流はルイ・シュポーアとのものである。1808年、シュポーア率いるゴータの楽団に客演した際に二人は出会い、親交を結んだ。ゾンダースハウゼン侯の依頼により、シュポーアはヘルムシュテットのために『クラリネット協奏曲第1番』作品26を作曲。その後も連携は続き、シュポーアは協奏曲第2番、第3番、第4番を含む複数の作品をヘルムシュテットに献呈した。シュポーアは自叙伝で、ヘルムシュテットの技術と音楽性を高く評価し、彼の存在が自由な創作を可能にしたと記している。

また、ヘルムシュテットは1812年にウェーバーにも作品作曲を依頼し、ウェーバーの『協奏的大二重奏曲』作品48がその成果とされる。

彼の技巧は広く認められた一方、「趣味」については賛否両論があった。1815年に共演したウェーバーは、その音色を「太く、陰にこもったよう」と評し、超絶技巧も「常に立派というわけではなく」、奏法が「ヴァイオリンの運弓法に染まりすぎている」と指摘、「ベールマンのもつ絶妙な趣味のよさには欠ける」と記した。これは、ヘルムシュテットが当時の慣習にとらわれず、個性的なアプローチを追求した結果とも言える。

楽器の改良への貢献

ヘルムシュテットはクラリネット自体の改良にも貢献した。特にシュポーアの作品に含まれる困難なパッセージに対応するため、自身が使用した5鍵の楽器を12鍵に改良し、高度な演奏技術を可能にした。

さらに、マウスピースやリガチャーに金属素材を使用することを早くから提唱し、一本でA管とB管の切り替えが可能な"Combination Clarinet"の開発にも関わった。これらの改良は、クラリネットの性能向上と演奏表現の拡大に寄与した。

もう一度検索