ヨハン・ハインリヒ・フリードリヒ・リンク

ヨハン・ハインリヒ・フリードリヒ・リンクの生涯と業績

ヨハン・ハインリヒ・フリードリヒ・リンク（Johann Heinrich Friedrich Link, 1767年2月2日 - 1851年1月1日）は、18世紀後半から19世紀前半にかけて活躍したドイツの博物学者、植物学者です。ヒルデスハイムの名士の家に生まれ、幼少期から父親の博物学コレクションを通じて自然科学への関心を深めました。

学術的な経歴

ゲッティンゲン大学で医学と自然科学を学び、1789年に卒業。その後、同大学で私講師を務めました。1792年にはロストック大学に新設された化学、動物学、植物学の教授に就任。当時、フロギストン説が主流であった中、アントワーヌ・ラヴォアジエの理論を支持し、化学に定量的な手法を導入したイェレミアス・リヒターの支持者でもありました。リンクは授業で化学量論を紹介し、1806年には化学実験室を設立。数多くの論文を発表し、ロストック大学では2度学長を務めました。

植物学への貢献

1797年から1798年にかけて、博物学者のホフマンゼックと共にポルトガルを調査し、これを機に植物学を研究の中心としました。1800年にはドイツ自然科学アカデミー・レオポルディーナの会員に選出。1808年には光学に関する論文でサンクトペテルブルク・アカデミーから賞を受賞するなど、学術的な評価を高めました。

1811年にはブレスラウ大学（現在のヴロツワフ大学）の化学と植物学の教授に任命され、同大学の学長も務めました。1815年には、カール・ルートヴィヒ・ヴィルデノウの没後、ベルリン大学の博物学教授に就任。同時に、標本館の学芸員、植物園の園長も兼任し、その職を生涯続けました。

ベルリン大学では、学芸員のクリストフ・フリードリヒ・オットーと共に、希少植物を含むコレクションを拡充。その数は14000点に達し、多くの菌類や多肉植物の記載も行いました。

主要な著作

リンクは、植物学、解剖学、哲学、自然史など多岐にわたる分野で著作を発表しました。主な著作として以下が挙げられます。

植物の解剖学と生理学の基礎（Grundlehren der Anatomie und Physiologie der Pflanzen, 1807）：植物細胞が均一な植物組織の一部ではなく、独立して存在することを初めて証明した重要な著作です。
植物の解剖学と生理学の基礎への補遺（Nachträge zu den Grundlehren etc., 1809）
自然科学によって解明された原始時代と古代（Die Urwelt und das Altertum, erläutert durch die Naturkunde, 1820-1822, 第2版 1834）
有用で最も一般的な植物を識別するためのハンドブック（Handbuch zur Erkennung der nutzbarsten und am häufigsten vorkommenden Gewächse, 1829）
古代と近代への移行（Das Altertum und der Übergang zur neuern Zeit, 1842）
植物哲学の要点（Elementa philosophiae botanicae, 1824, 第2版 1837）
薬草学の基礎を説明するための解剖植物図（Anatomisch-botanische Abbildungen zur Erläuterung der Grundlehren der Kräuterkunde, 1837-42）
厳選された解剖植物図（Ausgewählte anatomisch-botanische Abbildungen, 1839-42）
ベルリン王立植物園で栽培されているシダの種（Filicum species in horto regio Berolinensi cultae, 1841）
図解された植物解剖学（Anatomie der Pflanzen in Abbildungen, 1843-47）

また、フリードリヒ・オットー、フリードリヒ・クロッチュ、フォン・ホフマンゼックとの共著として、以下のような著作も発表しています。

ベルリン王立植物園の厳選された植物の図解（Icones plantarum selectarum horti regii botanici Berolinensis, 1820-28）
ベルリン王立植物園の珍しい植物の図解（Icones plantarum rariorum horti regii botanici Berolinensis, 1828-31）
* ポルトガル植物誌（Flore portugaise, 1809-1840）：長らく標準的な文献として用いられました。

リンクの遺産

ヨハン・ハインリヒ・フリードリヒ・リンクは、植物学の分野において多大な貢献を果たした人物です。特に植物細胞の独立性の発見は、後の細胞生物学の発展に大きな影響を与えました。また、多くの著作を通じて、植物学の知識普及に尽力しました。彼の収集した植物標本は現在も研究に活用されており、その学術的遺産は後世に受け継がれています。

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