ヨルダンの議会

ヨルダン議会：国王の権力と限定的な議会の役割

ヨルダン議会の正式名称は「مجلس الأمة」（Majlis al-Umma）であり、同国の立法府として機能しています。しかし、国王の権力が非常に強いことを踏まえると、議会の権限は限定的であると捉えるのが妥当でしょう。

両院制：上院と下院

ヨルダン議会は、上院（元老院）と下院（代議院）からなる両院制です。上院は65議席で、その構成員は国王によって直接任命されます。これに対し、下院の議員は選挙によって選ばれますが、その選挙制度は複雑です。

下院選挙：複雑な制度と課題

2016年と2022年の選挙法改正により、下院の138議席のうち、97議席が自由名簿式比例代表制（OLPR）、残りの41議席が閉鎖名簿式比例代表制（CLPR）で選出されることになりました。

OLPRでは、約20の選挙区で選出が行われ、その中に女性枠18議席、キリスト教徒枠7議席、チェチェン人とチェルケス人枠2議席が確保されています。有権者は、各政党から提示された候補者個人に投票します。

CLPRは2022年の選挙法改正で導入され、認可された政党に投票する制度です。これは、議会の約3割を政党に割り当てることを目的としています。各政党の立候補者名簿には、女性が3人に1人、最初の5人の候補者のうち少なくとも1人が35歳以下であることが義務付けられています。OLPRと同様に、キリスト教徒枠（2名）とチェチェン人とチェルケス人枠（1名）も確保されています。また、若者の政治参加促進のため、2022年からは被選挙権年齢が30歳から25歳に引き下げられました。

部族主義と国民の不信感

ヨルダンでは、政党よりも部族系の無所属候補が有利な状況が続いており、人権団体などから批判を受けてきました。農村部や部族集落での投票率が高く、国民の議会に対する信頼度が低下していることも大きな問題となっています。そのため、全国区制への移行が検討されており、議会の脱部族化が目指されています。

今後の課題

ヨルダン議会の現状は、国王の強い権力、複雑な選挙制度、部族主義の浸透、国民の不信感など、多くの課題を抱えています。これらの課題を克服し、真の意味での国民代表機関として機能するためには、さらなる選挙制度改革や政治改革が必要となるでしょう。国民の政治参加を促進し、透明性と公平性を高めることで、議会への信頼回復を図ることが重要です。 全国区制への移行がこれらの課題解決に繋がるのか、今後の動向に注目が集まります。

関連情報

元老院公式サイト：www.senate.jo
代議院公式サイト：www.representatives.jo

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