ヨヴィツァ・スタニシッチ

ヨヴィツァ・スタニシッチ：セルビア国家保安の重鎮、その光と影

ヨヴィツァ・スタニシッチ（Јовица Станишић、1950年 - ）は、セルビアの元国家保安庁（SDB）（後に国家保安局（RDB））長官を務めた人物です。彼の経歴は、ユーゴスラビア崩壊前後のセルビアにおける政治と権力の複雑な絡み合いを象徴しています。

初期のキャリアとKGBとの連携

1974年にベオグラード大学法学部を卒業後、スタニシッチは国家保安機関に入ります。当初は東部班の防諜将校として、ソ連国家保安委員会（KGB）との連絡を担当しました。その後、中央機構に移り、ベオグラードの「エクセリシオル」ホテルで、国際的に悪名高いテロリスト、カルロスとの交渉に参加するなど、重要な役割を担いました。さらに、国家保安庁（SDB）の分析局に移り、防諜部の次長にまで昇進しました。

SDB長官への就任とRDBへの改称

1987年から1988年にかけての「反官僚革命」の際、スタニシッチはゾラン・ヤナチコヴィッチの後任としてSDB長官に就任しました。1991年には、過去のイメージを刷新するため、国家保安庁を国家保安局（RDB）に改称しました。

RDB長官解任とその後の活動

1998年10月、スタニシッチはRDB長官を解任されます。解任の理由は明確ではありませんが、スロボダン・ミロシェヴィッチとの意見の相違など、様々な憶測が飛び交いました。しかし、解任後もスタニシッチは政治的な影響力を保持し続けました。

2000年の連邦大統領選挙では、出馬を要請されましたが、これを拒否。その後、ミロシェヴィッチの息子であるマルコと共同で、タバコビジネスに参入しました。

戦争犯罪裁判と有罪判決

2003年、スタニシッチはセルビア当局に逮捕され、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）に引き渡されました。彼は、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボにおける戦争犯罪に関与したとして起訴されました。当初、ICTYは彼に無罪判決を下しましたが、2021年の再審で有罪となり、懲役12年の刑が確定しました。さらに、2023年の控訴審では、刑期が15年に延長されました。

ヨヴィツァ・スタニシッチの生涯は、セルビアの近現代史における権力構造と、それに伴う倫理的な問題点を浮き彫りにしています。国家保安のトップとして、彼はセルビアの政治に深く関与し、その行動は国内外に大きな影響を与えました。しかし、戦争犯罪裁判での有罪判決は、彼の功績を大きく損なうものであり、彼の遺産は複雑なものとなっています。

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