ヨーロッパ景観条約

ヨーロッパ景観条約の概要

ヨーロッパ景観条約（European Landscape Convention）は、2000年にイタリアのフィレンツェで採択された国際的な条約で、ヨーロッパ全土の様々な景観を保全し、整備することを目的としています。この条約は、従来の保護の枠組みを超え、特別に価値が認められた地域に留まらず、地域住民の生活に密接に関連する全ての景観を対象としている点が特徴です。

条約の目的と理念

ヨーロッパ景観条約は、景観を「人間と自然の相互作用によって形成された地域」と定義し、景観の保護、管理、整備について法的な枠組みを提供します。具体的には、締結国には景観を法的に位置づけること、そして保護政策を策定し実施することが求められています。また、景観の保全と整備はすべての市民にとっての権利であり義務という理念も掲げています。

この条約は「保護」「マネジメント」「プランニング」という三つの原則を基盤としています。

1. ヨーロッパの景観すべてを対象とする

本条約の重要な理念の一つは、ヨーロッパに存在するあらゆる景観が保護の対象となることです。これには、保護区域や歴史的な都市地区だけでなく、農村や郊外、さらには市街地や自然空間、水域に至るまで、多様な景観が含まれます。

2. 景観は住民にとっての公共財である

景観は地域社会にとって重要な財産と位置づけられており、その管理や計画に対して住民参加が求められています。単に景観を保護するのみならず、都市計画の中での景観の重要性を認識し、考慮することが求められています。

3. 景観は動態的であり、変化する

第三の理念は、景観が静的なものではなく、時代の変化や社会経済的な要請に応じて常に進化するものであるという考え方です。景観を未来に引き継ぐためには、過去の形をそのまま保つのではなく、社会の変化に対応した整備が求められます。

批准国とその現状

2020年時点で、この条約を批准している国の数は40カ国にのぼります。批准国にはアイスランド、アイルランド、英国、イタリア、フランスなどが含まれ、これらの国は本条約の理念に基づいて自国の景観政策を策定しています。また、マルタは調印こそしているものの、まだ批准には至っていない状態です。

まとめ

このように、ヨーロッパ景観条約は、単なる景観の保護を超えて、地域住民との連携や社会の変化に柔軟に対応することを目指しています。全ての景観を公共財と認識し、様々な価値を持つ景観を保存・整備することは、持続可能な発展にも寄与する重要な取り組みとなっています。今後もこの条約は、景観保全や地域振興において重要な役割を果たし続けることでしょう。

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