ライトノベルの楽しい書き方

本田透によって執筆され、桐野霞がイラストを手がけた日本のライトノベルシリーズ。『ライトノベルのたのしいかきかた』と読み、略称は「ラノたの」。ソフトバンククリエイティブ（現・SBクリエイティブ）のGA文庫より、2008年2月から2012年1月にかけて全10巻が刊行された。本作は、主人公の少年がクラスメイトの美少女の意外な一面を知り、彼女の活動に協力する中で関係を深めていく様子を描いたラブコメディであり、2010年には実写映画化も実現している。

あらすじ

物語は、ごく普通の男子高校生である与八雲が、ある偶然から、学園で一番の美少女として知られるクラスメイト、流鏑馬剣の秘密を知ってしまうことから始まる。その秘密とは、剣が実は「姫宮美桜」というペンネームで活動する注目の新人ライトノベル作家であるということだった。剣は鮮烈なデビューを飾ったものの、「自身の経験に基づかないと物語を描けない」という作家としての弱点を抱えており、深刻なスランプに陥っていた。八雲は、そんな剣のスランプを脱却させるため、そして作家として成長させるために、彼女の執筆活動に協力することになる。その協力の一環として、二人は「お試しで付き合う」ことになり、共同生活や様々な経験を通じて、互いの価値観が変化し、次第に惹かれ合っていく。

登場人物

本作を彩る主要な登場人物は多岐にわたる。

与八雲（あたえやくも）
私立南堂学園に通う高校1年生。物語の主人公。16歳ながら恋愛にはほとんど興味がなく、初恋すら経験したことがなかった。流鏑馬剣に対しても最初は「綺麗な生き物」という認識だったが、お試し交際を経て心境に変化が生じる。熱狂的な海の生き物好きで、特にクラゲやウミウシなどを「可愛い」と感じる独特な感性の持ち主。「深海と宇宙は男のロマン」を信条とし、将来は「海の生き物博士」を目指しているが、具体的なビジョンは定まっていない。生きている海の生物を守り、愛することを望んでいる。

流鏑馬剣（やぶさめつるぎ）
八雲のクラスメイトであり、本作のヒロイン。容姿端麗で抜群のスタイルを持ち、スポーツも万能。身長は八雲よりわずかに高い。特に格闘技においては卓越した才能を持ち、幼少期には熊に勝利した逸話まである。しかし、本人は「可愛い女の子」に強い憧れを抱いており、自身の武道の才能にコンプレックスを感じている。「姫宮美桜」としてデビューした新人ライトノベル作家。文才はあるものの、体験に基づかないと書けない性質からスランプに陥りやすい。厳格な父親には作家活動を秘密にしている。作家特有の妄想癖があり、不器用で素直になれない性格のため、嫉妬や試し行為で事態を悪化させてしまうことも。

市古ゆうな（いちごゆうな）
八雲や剣と同じ学園の女子生徒。学内では「萌え部門」ランキング1位と称されるほどの愛らしさを持つ。「ぽんぽん」のペンネームで、剣のライトノベルのイラストを担当している。ドジであがり症、「はわわわ…」が口癖。一見気が弱そうに見えるが、譲れない点では強い意思を示す。逆境に強く、サメに襲われても冷静に対応したり、剣の代役で人前で話したりする一面も。その外見や性格は剣の理想像そのもので、剣が自分と比較して落ち込むことがある一方、ゆうなは「使えない」自分にコンプレックスを抱き、剣に憧れている。こうしたすれ違いを経て、二人はかけがえのない親友となる。

与心夏（あたえここな）
八雲の従姉で、出版社「放談社」に勤務する有能な編集者。剣の担当編集でもある。愛称は「ココナツ」や「なっち」。成人しているが、中学生に見えるほど幼い外見をしている。スランプに悩む剣に対し、従弟の八雲との「お試し交際」を提案した張本人であり、物語のきっかけを作った人物。趣味はケータイ小説を読むこと。八雲の実家であるカレーショップ「あたえや」に下宿している。

与こゆり（あたえこゆり）
八雲の妹で、中学2年生。落ち着いた兄とは対照的に活発な性格。「あたえや」でウェイトレスを務め、店のカレーの味をこよなく愛している。当初は恋愛に無関心だった兄が剣と付き合い始めたことに反発し、剣に突っかかることもあったが、夏祭りの出来事を機に剣に心を開き和解。以降、「剣ちゃん」と呼び慕っている。

与まるみ（あたえまるみ）
八雲とこゆりの母親。「あたえや」を女手一つで経営している。非常にのんびりとした、おおらかな性格で、店で何か問題が起きても彼女の「あらあら」という一言で丸く収まってしまう。仕事ができなくてもゆうなを雇い続けるなど、人間的な包容力が大きい人物。

石切清麿（いしきりきよまろ）
八雲のクラスメイト。中途半端なロン毛が特徴的。アニメ研究会所属で戦略シミュレーションゲーム好き、さらに校内の女子をデータ化するなど多趣味。海の生き物好きの八雲とはたまに話が合わないこともあるが、良好な友人関係を築いている。気弱だが心優しく、物語の3巻以降はなぜか女性にモテ始める。

鷹峰多々湖（たかみねたたこ）
3巻から本格的に登場する、放談社MO文庫の天才作家。心夏が担当している。デビュー作が20万部を超える大ヒットとなったが、繊細な性格ゆえにインターネット上の誹謗中傷や次回作へのプレッシャーから断筆状態にあった。万引き少年を優しく諭す石切を目撃して以来彼に一目惚れし、交際を開始。その影響か、家電コラムは再び執筆できるようになった。京都の名家の出身で、「タカさん」ことホークアイというボディガードが常に警護している。京都弁で話す。

流鏑馬涼牙（やぶさめりょうが）
4巻から登場する剣の従弟。小柄で少年らしい顔立ちが特徴。幼い頃から剣によって徹底的に鍛えられた影響で、軽度の女性恐怖症を抱えている。特に剣には絶対服従。

流鏑馬半次郎（やぶさめはんじろう）
剣の父親。範馬勇次郎に似た名前と経歴が示唆されるが、職業は実業家。非常に厳格な性格で、娘の剣を厳しく育ててきた。物語終盤で日本に帰国し、戸来市の再開発の一環として、「あたえや」を閉鎖させて跡地に「流鏑馬カレー」の日本1号店を出す計画を企てる。

流鏑馬早苗（やぶさめさなえ）
涼牙の母親で、剣の叔母にあたる人物。半次郎が海外赴任中の間、剣の保護者も務めていた。彼女もまた厳格な人柄である。

水戸敷あるみ（みとしきあるみ）
年齢・性別不明、メディア露出一切なしという伝説的な超人気ライトノベル作家。普段はSM女王風の衣装をまとい、女装バーで酒に溺れる姿が目撃されている。本名は内田イサカヱ。クラゲ研究でノーベル賞を受賞した内田章一の娘であり、クラゲに関する知識は八雲と同等かそれ以上、格闘技の実力も剣を凌ぐ。

おタネさんとおツネさん
たびたび登場し、主人公たちに謎めいた助言を与えては去っていく「双子のおばあちゃんズ」。その行動は戸来市の都市伝説となっているらしい。最終巻で、彼女たちの驚くべき正体が明かされる。

書籍情報

GA文庫より全10巻が刊行された。

映画

2010年12月4日には、本作を原作とした実写ラブコメディ映画が公開された。監督は大森研一が務め、これが初の商業用長編映画となった。主演はBerryz工房の須藤茉麻が流鏑馬剣役を演じ、与八雲役を佐藤永典、市古ゆうな役を竹達彩奈、与心夏役を能登有沙、与まるみ役を國府田マリ子、石切清麿役を鈴木拡樹、与こゆり役を五十嵐令子がそれぞれ演じた。主題歌には武川アイによる「Dreamer」が採用された。

映画のDVDは2011年3月2日に日本コロムビアから発売されており、本編ディスク（80分）に加え、限定版にはメイキング映像を含む特典ディスク（160分）が収録されている。

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