ライハウス陰謀事件

ライハウス陰謀事件について

ライハウス陰謀事件（Rye House Plot）は、1683年にイングランドで起こった国王の暗殺を企てた事件です。この事件では、チャールズ2世と彼の弟であるヨーク公ジェームズ（後のジェームズ2世）が狙われましたが、最終的には企てが発覚し、ホイッグ党への厳しい弾圧が行われました。

背景

1660年に王政復古が達成され、イングランドは一時的な平和を取り戻しました。しかし、即位したチャールズ2世の政策は、フランスのカトリック勢力に寄り添っているとの懸念が広がりました。イングランドでは、カトリックや絶対王政への抵抗が根強く、国民の間には王位継承問題に対する不安が募っていました。特に、メアリー1世の記憶が色濃く残っている中で、急進的な勢力はカトリックの王が王位に就くことを避けるべきだと考えていました。

チャールズとジェームズは、公式にはイングランド国教会を信仰していましたが、カトリックに対して特別な敵意を抱いているわけではありませんでした。しかし、1670年にジェームズがカトリックに改宗したことが報じられると、急進派はより一層の危機感を抱き、王室がカトリック勢力と結びつこうとしているかのように感じました。

排除法案の提起

このような状況を受けて、議会は1679年と1680年に王位排除法案（Exclusion Bill）を提出しました。この法案の目的は、カトリックであるジェームズを王位継承の対象から除外することでしたが、貴族院とチャールズの議会解散によって失敗に終わりました。この法案が頓挫したことにより、ホイッグ党は合法的な手段ではジェームズの王位継承を阻止できないことを痛感し、陰謀の噂が広がるようになりました。

ライハウスでの陰謀

ライハウスは、ロンドンとケンブリッジの間にあるホッデスドン地区に位置する邸宅です。この場所でホイッグの支持者たちが集まり、チャールズ2世とジェームズを暗殺するための計画を練りました。彼らは武装集団を編成し、ニューマーケットからの帰路に奇襲をかける戦略を立てたのです。

しかし、1683年4月1日にチャールズがニューマーケットに向かう予定であったところ、3月22日に起きた火災の影響で、彼とジェームズはロンドンに引き返さざるを得なくなり、計画は不発に終わりました。

陰謀の発覚とその後

事件の発覚は、1683年6月に密告によって伝えられました。事件の隅々まで捜査された結果、多くのホイッグ党の有力者が逮捕され、首謀者と目されていたウィリアム・ラッセルやアルジャーノン・シドニーは、十分な証拠もないままに処刑されました。このような弾圧はホイッグ党にとって壊滅的な打撃となり、カトリックの王ジェームズの即位は確固たるものとなりました。

その一方で、カトリックとジェームズへの反感はさらに強まり、1685年にジェームズが即位すると、彼とその権力者たちはホイッグを危険なテロリスト集団と見なすようになりました。このような双方の緊張関係は、後の名誉革命（1688年）に繋がるクーデターの遠因ともなったのです。

この事件は、イングランドにおける政治的陰謀の複雑さと、急進的勢力の苦悩を浮き彫りにしています。

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