ライヒ裁判所

ライヒ裁判所（Reichsgericht）は、1879年から1945年までのドイツ国における民事および刑事の最上級審を管轄した裁判所です。国家司法法（Reichsjustizgesetze）によって創設されました。

日本語では、「ライヒ裁判所」の他に、「ライヒ最高裁判所」、「帝国裁判所」、「帝国最高裁判所」、「ドイツ国最高裁判所」、「国事裁判所」など、複数の訳語が存在します。

歴史

ライヒ裁判所は、ドイツ帝国の成立後、司法制度の中核として重要な役割を果たしました。しかし、ナチス政権の台頭とともに、その性格は大きく変質しました。ナチ政権は、ライヒ裁判所を自らの政策遂行の道具として利用し、裁判所は国家社会主義的な課題に深く関与することになりました。

具体的には、ナチ政権が制定した婚姻法や契約法について、ライヒ裁判所は法的判断を下しました。ただし、その関与はニュルンベルク法制定までにとどまりました。しかし、ナチスの政策に対して最高レベルの法的正当性を与えたという点で、ライヒ裁判所は批判の対象となっています。

第二次世界大戦の終結に伴い、ライヒ裁判所は廃止されました。米英仏の占領区域においては、ドイツ統一経済区高等裁判所（the German High Court for the Unified Economic Region）に改組されました。これにより、ライヒ裁判所は、その歴史に幕を閉じることとなりました。

庁舎

ライヒ裁判所の庁舎は、ドイツのザクセン州ライプツィヒに位置しています。この建物は、ルートヴィヒ・ホフマン（Ludwig Hoffmann）とペーター・デュブヴァ（Peter Dybwad）によって設計され、1895年に完成しました。

ルネサンス建築様式で設計された庁舎は、2つの中庭と中央の丸屋根が特徴的です。エントランスには大きなポルチコが設けられ、その壮麗な外観は、当時のドイツ帝国の威信を象徴していました。豪華な装飾が施された切妻屋根や彫刻は、オットー・レッシング（Otto Lessing）によるものです。

ドイツ再統一後、かつてのライヒ裁判所庁舎は大規模な改修を受け、現在は連邦行政裁判所として使用されています。歴史的な建造物としての価値を保ちつつ、新たな役割を担っています。

ライヒ裁判所は、その設立からナチス政権下での役割、そして戦後の解体と庁舎の変遷を通じて、ドイツの近現代史における重要な出来事と深く関わってきました。その歴史を振り返ることは、法の支配の重要性、そして政治権力と司法の関係について考える上で、貴重な示唆を与えてくれます。

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