ライマン公会堂

ライマン公会堂：音楽の聖地、その歴史と魅力

ライマン公会堂は、アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルに位置する、2,362席の歴史的なライブ会場です。かつて「グランド・オール・オープリー」の本拠地として世界的に知られていました。その長い歴史の中で、数多くの音楽家やエンターテイナーが舞台に立ち、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

誕生と変遷：信仰の場から音楽の殿堂へ

1892年、実業家トーマス・ライマンによって「ユニオン・ゴスペル・タバナクル」として建設されました。当初は、信仰復興論者サミュエル・ポーター・ジョーンズの礼拝堂として設計されたのです。ライマンの死後、彼の功績を称え、「ライマン公会堂」と改名されました。

1911年から1914年の間には、トレヴェッカ・ナザレン大学の本拠地としても使用され、多目的な施設としての役割も果たしました。

1943年から1974年までの間、「グランド・オール・オープリー」の公開生放送会場となり、その名声を確立しました。その後、オープリーは郊外のより大きな会場に移転しましたが、ライマンの舞台の一部は切り取られ、新しいオープリー・ハウスの舞台にはめ込まれ、その歴史が継承されました。

荒廃からの復活、そして新たな輝き

「オープリー」の移転後、ライマン公会堂は約20年間放置され、荒廃が進みました。解体の危機にも瀕しましたが、音楽家やファンからの強い反対により保存されることになりました。その後、所有者が数回変わり、1983年にゲイロード・エンタテイメント・カンパニーに売却されました。内部見学は可能になったものの、公演はしばらく行われませんでした。

しかし、その間も映画のロケ地として活用され、数々の名作にその姿を刻みました。

1991年、エミルー・ハリスがコンサートを開催し、アルバム『At the Ryman』をリリースしたことが、ライマン公会堂の復興のきっかけとなりました。1994年には大規模な改修が行われ、コンサートホールとして再オープン。音楽の殿堂としての輝きを取り戻しました。

カントリー・ミュージックの「母教会」

ライマン公会堂は、「カントリー・ミュージックの本教会」という愛称で親しまれています。初期の礼拝堂を彷彿とさせる座席配置が、その雰囲気を醸し出しています。

1999年以降、毎年冬季には「グランド・オール・オープリー」がライマン公会堂に戻り、「オープリー・アット・ザ・ライマン」として公演を行っています。これは、オープリーのルーツであるライマン公会堂を大切にするという思いの表れでもあります。

数々の歴史的出来事

ライマン公会堂では、オルタナティブ・ロック、ブルーグラス、ブルース、カントリー、クラシック、フォーク、ゴスペル、ジャズ、ポップ、ロックンロールなど、多岐にわたるジャンルのコンサートが開催されています。また、ミュージカル公演やスタンダップコメディの会場としても利用されています。

1969年から1971年には、ABCのバラエティ番組『The Johnny Cash Show』が収録され、ジョニー・キャッシュをはじめとする豪華な出演者が会場を盛り上げました。

また、ドリー・パートン、タミー・ワイネット、ロレッタ・リン、ハンク・ウィリアムズ、パッツィー・クラインなど、数々の著名なカントリー歌手がここでオープリー・デビューを飾っています。

舞台裏の物語

舞台裏には、ジョニー・キャッシュやミニー・パールなど、伝説的なパフォーマー専用の楽屋が残されています。また、ある訪問者は、ライマン公会堂の音響効果を、モルモンタバナクル合唱団の会場であるソルトレイク礼拝堂に次いで世界で2番目に優れていると評価しています。

1974年にグランド・オール・オープリー・ハウスがオープンした際、ライマン公会堂の舞台から切り取られた円形の一部が、新しいオープリー・ハウスの舞台にはめ込まれています。これは、ライマンの歴史を継承する象徴的な出来事です。

文化遺産としての価値

ライマン公会堂は、1971年にアメリカ合衆国国家歴史登録財に、2001年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されました。その歴史的、文化的価値は高く評価されています。

2010年のテネシー洪水では、オープリー・ハウスが一時的に使用不能となりましたが、ライマン公会堂は被害を免れ、オープリーの収録が行われました。

ライマン公会堂は、単なるコンサートホールではなく、アメリカ音楽の歴史を体現する生きた博物館です。その舞台に立ち、音楽に耳を傾けることで、過去と現在が交錯する特別な体験を味わうことができるでしょう。

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