ラウニ・モルベルイ

ラウニ・モルベルイ

ラウニ・モルベルイ（本名：Rauni Antero Mollberg）は、1929年4月15日にフィンランド中部の都市ハメーンリンナに生を受けた、同国を代表する映画監督の一人です。愛称は「Molle」。テレビドラマやドキュメンタリー制作からキャリアをスタートさせましたが、本格的に長編映画の監督として活動を始めたのは40歳を過ぎてからでした。

モルベルイの監督作は、人間の内面に深く切り込み、しばしば社会的なタブーや人間の原始的な感情を描写することで知られています。彼の名を広く知らしめたのは、1973年に制作された長編映画『Maa on syntinen laulu』（原題）です。これは、フィンランドの若手作家ティモ・K・ムッカの同名小説を原作としており、フィンランド北部の閉鎖的な村を舞台にした、若い女性の情熱的な愛と性の目覚めを描いた作品です。1974年に各地で開催された国際映画祭で大きな反響を呼び、批評家ピーター・コーウィーからは「驚異的な力強さと真実味あふれる官能性で、評論家も観客も容易に圧倒した」と絶賛されるなど、世界的な評価を獲得しました。フィンランド国内でも歴代有数の観客動員数を記録する大ヒットとなりましたが、そのあまりに率直な表現から、当時のフィンランド国家映画委員会からは冷遇されるという複雑な状況を経験しました。

1985年には、フィンランドの国民的小説であるヴァイノ・リンナの『無名戦士』を原作とし、エドフィン・ライネが1955年に手掛けた名作のリメイク版を監督しました。完成した作品は『若き兵士たち/栄光なき戦場』（原題: Tuntematon sotilas）として発表され、同年のカンヌ国際映画祭でも上映されました。物語の根幹はライネ版と共通していますが、モルベルイは当時の最新技術であったカラーフィルムを採用し、プロのスター俳優ではなく、厳しいオーディションで選ばれたほぼ無名の若い俳優たちを多数起用することで、より生々しく、泥臭い戦争の現実を描き出そうとしました。このリメイク版もまた、フィンランド国内で広く受け入れられました。

モルベルイは生涯を通じて寡作でしたが、一作ごとに綿密な準備と独自の演出手法で、力強い映像作品を生み出しました。彼の作品は、フィンランドの風景とそこに生きる人々の姿を、美しさだけでなく、時には残酷さや不条理さをも含めて率直に描き出すことに特徴があります。

2007年10月11日、白血病のため78歳でこの世を去りました。しかし、彼の残した作品群、特に『Maa on syntinen laulu』や『若き兵士たち』は、フィンランド映画史において重要な位置を占め続けています。

主な監督作品

Lapsuuteni (1967)
Tehtaan varjossa (1969)
Sotaerakko (1972)
Maa on syntinen laulu (1973)
Siunattu hulluus (1975)
Aika hyvä ihmiseksi (1977)
ミルカー/禁じられた愛の泉 Milka – elokuva tabuista (1980)
若き兵士たち/栄光なき戦場 Tuntematon sotilas (1985)
Ystävät, toverit (1990)
Paratiisin lapset (1994)
Taustan Mikon kotiinpaluu (1999)
Ison miehen vierailu (1999)
Puu kulkee (2000)
Heikuraisen nauru (2001)
Korpisen veljekset (2002)
Reissu (2004)

関連リンク

* ラウニ・モルベルイ - IMDb (英語)

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