ラジオ・タイムズ

ラジオ・タイムズ：英国放送史を彩る番組情報誌

1923年、英国で誕生した『ラジオ・タイムズ』は、世界初のテレビ・ラジオ番組情報誌として知られています。創刊者であるジョン・リースは当時BBCの総支配人を務めており、新聞社のラジオ番組紹介ボイコットという逆境の中、この雑誌を立ち上げました。当初はBBCと印刷業者との共同事業でしたが、後にBBCが編集から出版までを完全に管理するようになります。

発行と歴史：ラジオからテレビへ、そしてデジタル化へ

創刊当初はラジオ番組情報が中心でしたが、テレビ放送開始と共にテレビ番組欄が追加され、世界初のテレビ番組情報誌へと進化を遂げます。第二次世界大戦中は紙不足により発行部数が激減するも、戦後にはテレビの普及と共に発行部数は急増し、ヨーロッパ随一の番組情報誌へと成長を遂げました。

1950年代にはラジオよりもテレビ番組が中心となり、表紙デザインもその変化を反映するように変化していきました。1991年の規制緩和後は、民放テレビ局の番組情報も掲載するようになり、今日の多チャンネル時代の番組情報を網羅する雑誌へと発展しました。

デジタル化への取り組みも早く、2012年にはBBCゲノム・プロジェクトとして、1923年から2009年までの番組情報をデジタルアーカイブ化しました。このプロジェクトにより、膨大な放送番組データがオンラインで検索・閲覧できるようになり、放送史研究に貢献しています。

デザインと地域版

『ラジオ・タイムズ』は、その番組表のデザインにも特徴があります。初期のデザインから、時代に合わせて番組表のレイアウト、カラーコード、フォントなどが変更されてきました。特に、1990年代以降は、チャンネルロゴの使用や、デジタル放送の増加に対応したページ構成などが導入されています。

地域ごとの番組編成の違いを反映した地域版も発行されており、放送エリアの変化に応じて地域版の統合や新設が行われてきました。現在は、地域版の数は減少していますが、それでも英国各地の視聴者へ合わせた情報提供を続けています。

記憶に残る表紙と発行されなかった号

『ラジオ・タイムズ』の表紙は、BBC番組の宣伝や、社会的なイベントを反映したデザインが用いられてきました。特に『ドクター・フー』は表紙を飾る機会が多く、コレクターも多いことで知られています。また、ストライキや燃料不足、印刷業者とのトラブルなどが原因で発行されなかった号も存在し、英国の歴史的出来事を反映しています。

関連出版物とウェブサイト

『ラジオ・タイムズ』は、番組情報誌以外にも、『Radio Times Guide to Films』などの映画ガイドや、コメディ、SFなどをテーマにしたガイドブックも発行しています。ウェブサイトも1997年に開設され、番組情報に加え、テレビ、ラジオ、映画のおすすめ作品を紹介する総合エンタメサイトとして運営されています。

『ラジオ・タイムズ』の意義

80年以上に渡り、英国の放送文化と歩んできた『ラジオ・タイムズ』は、単なる番組表以上の存在です。その歴史は、英国放送史そのもの、そして時代の変化を映し出しています。デジタル化への対応、多様なメディアへの対応、そして長きに渡る発行は、時代の変化の中でその存在感を保ち続けるその姿勢を示しています。これからも、英国のメディア文化において重要な役割を果たし続けることでしょう。

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