ラストベルト

ラストベルト（Rust Belt）

概要

ラストベルトはアメリカ合衆国の中西部と大西洋岸中部の一部に広がる地域で、脱工業化が進行中の地帯を指します。この地域は、製造業や重工業がかつての栄光を失い、多様な経済構造への変遷を経験しています。ラストベルトという名称は、使われなくなった工場や老朽化した設備を象徴する『rust（錆）』に由来しています。地理的には、ボスウォッシュ回廊の西側から始まり、ウィスコンシン州の東部に至るまで広がる範囲に定義され、周囲にはアパラチア山脈の炭田地帯や五大湖が接しています。

地理的な特性

ラストベルトは、インディアナ州とオハイオ州の北部、ミシガン州、ウィスコンシン州、シカゴ、ニューヨーク州の北部など、多くの州にまたがっています。この地域の経済は、長らく製造業に依存していましたが、近年の外部委託や産業構造の変化により多くの都市が経済的な苦悩を味わっています。特に自動車産業の重圧が強く、回復が急務とされています。この地域では、液体水素燃料電池やナノテクノロジーなど、新しい技術が頭角を現しています。

歴史的な背景

ラストベルトは19世紀において、製造業や重工業の中心地として栄えました。石炭などの自然資源は、この地域で豊富に採掘され、大規模な工業発展を支えました。五大湖を利用した運輸網は、製品の迅速な流通を促進し、多くの都市が成長しました。1960年代以降、グローバリゼーションや国際貿易の拡大が進む中で、製造業は低賃金国との競争に直面しました。このことで多くの工場が閉鎖され、地域経済は大きな打撃を受けました。

経済の変遷

製造業の雇用は減少しているものの、アメリカにおける生産量は依然として増加しており、特に高付加価値製品の生産が重要視されています。ラストベルトは、依然として輸出においてアメリカで最も重要な地域の一つでもあります。また、新たな技術の発展が期待され、多くの企業がこの地域に注目しています。アメリカの製造業は、労働集約型から自動化や無人化が進む方向にシフトしており、地域の経済が持ち直すきっかけともなっています。

地域の社会的動向

最近では、ラストベルトの都市部から郊外への移住が進んでいます。これが都市の人口減少を引き起こしていますが、逆に以前の中心街では活性化の兆しも見られます。例えば、デトロイトやクリーブランド、ピッツバーグなどの都市では、新たなテクノロジー企業が進出しています。これに伴い、住宅市場も高騰し、投資の対象となっています。

政治的な影響

ラストベルトの経済的変動は、政治的な選択にも影響を与えています。特に2016年の大統領選挙において、伝統的に民主党支持が強かった地域でも、トランプ候補が環太平洋パートナーシップ協定からの離脱を訴え、多くの支持を獲得しました。これにより政治的地図が変わり、労働者の不満が顕在化しました。

結論

ラストベルトは、アメリカの製造業と経済の変化を象徴する地域です。地域の復活には新たな技術や産業の発展が鍵となり、経済的な再生が期待されています。

もう一度検索