ラドゥガ国家機械製造設計局

ラドゥガ国家機械製造設計局 (ГосМКБ "Радуга")

ラドゥガ国家機械製造設計局（ГосМКБ "Радуга"）は、ロシア連邦において多様なミサイルシステムの研究開発と製造を担う主要企業の一つです。ロシアの防衛産業再編によって形成された一大企業複合体、タクティカル・ミサイルズ・コーポレーション公開株式会社の傘下に属しており、モスクワ州のドゥブナ市にその本拠を置いています。設立以来、同設計局はソビエト時代から現代に至るまで、数多くの画期的なミサイル技術とシステムを生み出してきました。

歴史

ラドゥガ設計局の歴史は、第二次世界大戦終結直後の1946年10月に「OKB-2」として始まったソビエト航空技術開発の初期段階に根差しています。その後、1951年10月13日には、著名な航空機設計者であるアテム・イヴァノヴィチ・ミコヤーンとミハイル・イリイチ・グレーヴィチが率いる「OKB-155」の一部門である「OKB-155-1」に統合されました。転機が訪れたのは1957年3月で、アレクサンダー・ヤコヴレヴィチ・ベレズニアクを主任設計者として、OKB-155から独立した独自の設計局へと発展します。

独立後、組織はその時代背景や任務の変化に応じて複数回の名称変更を行います。1965年6月には「機械製造設計局『ラドゥガ』」、1972年6月19日には「ドゥブナ製造設計合同『ラドゥガ』」、1978年9月7日には「ドゥブナ製造合同『ラドゥガ』」、そして1982年5月12日には再び「機械製造設計局『ラドゥガ』」へと名称が改められました。

現代ロシアにおける防衛産業の大規模な再編成プロセスの中で、ラドゥガ設計局もその体制を刷新しました。2004年5月9日の大統領令591号に基づき、多くのミサイル関連企業が統合されて設立された国営企業複合体、タクティカル・ミサイルズ・コーポレーションの傘下に組み込まれ、公開株式会社としての形態をとるに至りました。この統合は、ロシアのミサイル開発・製造能力を集約・強化することを目的とした戦略の一環であり、ラドゥガ設計局はその中核的な役割を担っています。タクティカル・ミサイルズ・コーポレーション自体は、21世紀に入ってから始まったロシアの防衛産業における統廃合の成果として設立された、複数のミサイル開発・製造企業からなる一大コンツェルンです。

主な開発製品

ラドゥガ設計局は、特に航空機搭載型と艦載型のミサイル分野で多くの実績を残しています。その製品ポートフォリオは非常に幅広く、ソビエト時代から現代に至るまで、様々な種類のミサイルを開発してきました。以下に代表的な製品群とその概要を示します。

「コメータ」（彗星）シリーズ: ソビエト連邦で初めて実用化された空対艦ミサイルであるKS-1（1947年開発開始）をはじめとする、初期の短距離空中発射型対地・対艦ミサイルです。Tu-16爆撃機に搭載されたK-10S（1955年開発開始）などもこのシリーズに属します。

艦載型Pシリーズ: 主に水上艦艇から発射される対艦ミサイルです。P-15（1955年開発開始、1960年代初頭運用開始）は、中距離対艦ミサイルとして広く使用され、中国製のHY-1やHY-2などの原型となりました。P-270（1973年開発開始、1984年初期運用開始）は超音速の対艦ミサイルで、高速化のためラムジェット推進を採用しました。

航空機搭載型Kh/KSRシリーズ: ラドゥガ設計局が最も多くの種類を手掛けた分野です。
KSR-2（1958年開発開始、1962年運用開始）およびKSR-5（1962年開発開始、1969年運用開始、1994年退役）は、Tu-16爆撃機に搭載される空中発射式対地・対艦ミサイルです。KSR-11はKSR-2をベースにした対レーダーミサイルでした。
Kh-15（1970年代開発開始、1980年代運用開始）は、液体推進剤を使用する超音速の短距離空対地弾道ミサイルで、Tu-22やTu-95に搭載されました。
Kh-20（1954年開発開始、1960年運用開始）およびKh-22（1958年開発開始、1971年、Tu-22による運用開始。1987年、Tu-95による運用開始）は、Tu-95やTu-22/Tu-95に搭載された大型の超音速空対地/対艦ミサイルです。Kh-22は高速性と射程により、特に冷戦期の西側空母艦隊に対する主要な脅威の一つと見なされました。
Kh-28およびKh-58（1970年代開発開始、1982年運用開始）は、敵のレーダー波を追尾して攻撃する対レーダーミサイルで、Kh-58はSu-24戦闘爆撃機に搭載されました。
Kh-55（1976年開発開始、1987年運用開始）は、Tu-95やTu-160といった戦略爆撃機から発射される長距離巡航ミサイルで、精密な地上目標攻撃能力を持ちます。
Kh-59とその派生型（Kh-59M, Kh-59MK）は、初期はTV画像誘導の固体ロケット推進式空対地ミサイルでしたが、後にターボジェット/ターボファンエンジンやアクティブ・レーダー・ホーミングシーカーを備えた対艦攻撃型（Kh-59MK）なども開発され、多用途化が進められました。

空対空ミサイル: K-9短距離空対空ミサイルを開発しましたが、搭載予定機（Ye-150）が実用化に至らなかったため、実際の運用には至りませんでした。

対潜ミサイル: OKB-52チェロメイ設計局と共同で開発したRPK-3は、水上艦から発射される対潜・対水上ミサイルです。

その他のプロジェクト: ミサイル開発に加え、MV-1やKSR-5-NMといった標的機の製造や、Tu-160戦略爆撃機を母機として衛星を打ち上げる空中発射ロケットシステム「Burlak/Burlak-M」の開発構想にも関与しました。

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