ラドクリフ天文台

ラドクリフ天文台：オックスフォードの星々と歴史

1773年、オックスフォード大学に設立されたラドクリフ天文台は、イギリス天文学史において重要な役割を果たした天文台です。その歴史は、18世紀半ばにさかのぼります。

設立と建設

天文台の建設は、サヴィリアン天文学教授であったトーマス・ホーンズビーの提案によるものです。1769年の金星の日面通過観測を契機に、より充実した観測設備の必要性を痛感したホーンズビーは、オックスフォード大学への新たな天文台の設立を提言しました。建設資金は、著名な医師ジョン・ラドクリフからの遺産寄付によって賄われ、天文台は彼の名にちなんで命名されました。

建築は、まずヘンリー・キーンが設計を担当し1772年に着工、その後ジェームズ・ワイアットが設計を引き継ぎ、1794年に完成しました。アテネの「風の塔」をモチーフとした建物は、現在も歴史的建造物（グレードI指定）として大切に保存されています。

観測活動と南アフリカへの移設

当初、サヴィリアン天文学教授が天文台の所長を兼任していましたが、1839年以降は、天文観測の経験がないジョージ・ジョンソンがサヴィリアン天文学教授に就任したため、新たに「Radcliffe Observer」の職位が設けられ、マニュエル・ジョン・ジョンソンが初代所長に就任しました。

しかし、オックスフォードの都市化による光害や、そもそも観測環境が良好とは言えない気候条件によって、観測の精度向上は困難を極めました。そのため、1939年、観測施設は南アフリカのプレトリアに移設されることになります。その後、1970年代には南アフリカ天文台（SAAO）に統合されました。

歴代所長

ラドクリフ天文台の歴史を語る上で、歴代所長（Radcliffe Observer）の存在は欠かせません。彼らが天文台の運営を担い、天文学の発展に貢献しました。主な歴代所長は以下の通りです。

1839年: マニュエル・ジョン・ジョンソン (Manuel John Johnson)
1860年: ロバート・メイン (Robert Main)
1879年: エドワード・ジェームズ・ストーン (Edward James Stone)
1897年: アーサー・ランボート (Arthur Alcock Rambaut)
1924年: ハロルド・ノックス＝ショー (Harold Knox-Shaw)
1950年: デイビッド・サッカレー (David Thackeray)

現在

現在、ラドクリフ天文台の建物はグリーン・テンプルトン・カレッジの施設として使用されています。初期の観測機器の一部は、オックスフォードの科学史博物館で展示され、その歴史を後世に伝えています。ラドクリフ天文台は、もはや活発な観測施設ではありませんが、イギリス天文学史において重要な足跡を残した、歴史的建造物としてその存在感を保ち続けています。オックスフォード大学という教育機関の歴史と天文学研究の歴史を繋ぐ重要な遺産と言えるでしょう。

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