ラブ・ウィッチ

『ラブ♡ウィッチ』：未完の魔法少女物語

武内直子氏による漫画作品『ラブ♡ウィッチ』は、2002年、講談社の少女漫画雑誌『なかよし』に掲載された、変身魔法少女を題材とした作品です。わずか3話という短い連載期間で休載となり、その後再開されることはありませんでした。そのため、単行本化もされておらず、幻の作品として知られています。

従来の魔法少女像を覆す設定

『ラブ♡ウィッチ』は、魔女の家系を舞台にしていますが、すべての血縁者が魔法能力を持つとは限りません。主人公の安珠愛は、魔女の血筋を受け継ぎ、特殊なミトコンドリアDNAを持つ唯一の人物であり、変身能力を有する「ラブウィッチ」です。一方、姉である安珠星は多少の魔法が使えますが、変身はできません。もう一人の姉、安珠花は魔法能力を持たず、叔母である安珠友妃も変身能力はありません。この設定は、魔法少女ものにおける従来のあり方を覆す、独特な試みと言えるでしょう。

切ない物語のあらすじ

主人公の安珠愛と双子の弟・安珠勇は、13歳の誕生日を迎えました。亡くなった祖母から、安珠家は代々魔女の家系であり、13歳で特別な儀式を行うことを知らされます。しかし、その儀式は「最愛のものを捧げる」という、残酷なものでした。

儀式において、病気を患っていた勇は突然倒れてしまいます。愛は勇を救うため、変身し、儀式を実行しますが、捧げた「最愛のもの」は勇自身でした。その結果、愛は勇に関する記憶をすべて失い、家族写真からも消え去ってしまいます。この、愛の犠牲と、その悲劇的な結末が、物語の大きな核となっています。

魅力的な登場人物たち

登場人物たちは、それぞれ個性的なキャラクターで描かれています。

安珠愛（あんじゅ あい）：主人公。変身能力を持つ「ラブウィッチ」。変身後の姿は亡き母に似ていると友妃から語られています。
安珠勇（あんじゅ ゆう）：愛の双子の弟。学校では人気者ですが、深刻な病気を患っています。
安珠星（あんじゅ ほし）：「コールドウィッチ」と呼ばれ、多少の魔法は使えますが変身はできません。
安珠花（あんじゅ はな）：魔法の能力は全くありません。「スリーピングウィッチ」と呼ばれています。
安珠友妃（あんじゅ ゆき）：愛たちの叔母。「ホットウィッチ」で魔法の能力は高いものの変身はできません。若作りで、年齢を指摘されると姪を殴り飛ばすほどです。
一柳るり（いちやなぎ るり）：番外編『シスター・ウイッチ』の主人公。愛と同様に魔女の家系に生まれます。
* モモ：るりの前に現れた謎の少女。その正体は明かされていません。

未完の物語、そして残された謎

『ラブ♡ウィッチ』は、未完の作品であるため、多くの謎を残したまま終わっています。安珠愛の記憶喪失、モモの正体、そして、魔女の家系の歴史など、多くの謎が読者の想像力を掻き立てます。短いながらも、独特の世界観と魅力的なキャラクター、そして切ない物語は、多くの読者に強い印象を与え、未単行本化ながら、現在でも多くのファンを魅了し続けています。この作品は、もし完結していたら、どのような物語になったのか想像するのも楽しみの一つと言えるでしょう。

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