ラマーズ法

ラマーズ法：自然な出産をめざす方法

ラマーズ法は、1951年頃にフェルナン・ラマーズによって体系化された自然分娩法です。ロシアの伝統的な出産方法を起源とし、アメリカを経て日本に紹介されました。現在では、世界中で多くの妊婦が利用する、代表的な自然分娩法の一つとなっています。

ラマーズ法の起源と普及

ラマーズ法の起源は、ロシアのシベリアなどの開拓地における伝統的な出産方法に遡ります。医療施設が遠隔地にある環境において、家族や友人の助けを借りながら安全に出産を行うための知恵が、長年にわたり受け継がれてきました。この伝統的な出産方法は、ヨーロッパを経由してアメリカ大陸に伝わり、開拓地での出産方法として発展しました。

アメリカでは、この方法が発展・体系化され、フェルナン・ラマーズによって「ラマーズ法」として確立されました。その後、1960年代には日本にも紹介され、特に1970年代のウーマンリブ運動の高まりと相まって、急速に普及していきました。

日本におけるラマーズ法の普及

日本では、1960年代後半に医師主導の病院分娩が主流となる中、ラマーズ法は、助産婦のサポートの下、妊婦が主体的に出産に臨む方法として注目されました。「いいお産」「自然なお産」を理想とする妊婦や助産婦、そしてウーマンリブ運動家などから支持を集めました。

1978年の朝日新聞の連載記事「お産革命」でラマーズ法が紹介されたことが、日本での普及に大きく貢献しました。杉山次子氏が開校した「お産の学校」では、ラマーズ法の理論と実践（呼吸法、弛緩法、妊婦体操など）が体系的に教えられ、多くの受講生を輩出しました。

さらに、山田美津子氏による『女のからだ』の翻訳出版や、日赤医療センターの雨森良彦氏によるラマーズ法での出産支援、三森孔子氏による「三森式ラマーズ法」の開発なども、ラマーズ法の普及に大きく影響を与えました。1980年代には、助産婦団体や医師からも理解が進み、病院での産前教育にも取り入れられるようになりました。

ラマーズ法の具体的な内容

ラマーズ法の中心となるのは、呼吸法、弛緩法、そして出産への意識改革です。

呼吸法: 陣痛の痛みを軽減し、リラックスするための様々な呼吸法が用いられます。有名な「ヒッ・ヒッ・フー」という呼吸法は、その一例です。
弛緩法: 身体の緊張を解き、リラックスを深めるための様々な方法が用いられます。筋肉の緊張を意識的に弛緩させることで、陣痛の痛みを和らげることが期待できます。
出産への意識改革: 出産を恐怖心や不安感を持つのではなく、自然な生理現象として肯定的に捉えるためのサポートが行われます。

これらの方法を通して、出産への不安を軽減し、自然で快適な出産を経験することが目指されます。

ラマーズ法と現代

ラマーズ法は、現代においても多くの妊婦に利用されています。一方で、医療技術の進歩や、個々の妊婦のニーズの多様化に伴い、ラマーズ法以外の様々な分娩方法も選択可能となっています。ラマーズ法は、それらの中で、自然な出産を望む妊婦にとって重要な選択肢の一つであり続けています。

参考文献

Lamaze, Fernand、Vellay、1952年12月「L'accouchement sans douleur par la methode psychophysique; premiers resultats portant sur 500 cas（英訳：Painless labor by a psychophysical method; first results of 500 cases）」『Gazette Medicale De France』59巻23号1445～1460ページ、PMID 13043777
山田美津子訳『女のからだ』合同出版
安井眞奈美『出産環境の民俗学―“第三次お産革命”にむけて 』昭和堂 2013年
杉山次子, 堀江優子『自然なお産を求めて : 産む側からみた日本ラマーズ法小史』勁草書房〈勁草-医療・福祉シリーズ 67〉、1996年
三森孔子『産婆さんがすすめる すてきなラマーズ法お産』文化出版局 1978年
ぐるーぷ・はなみずき『7年目のラブレター ラマーズ法出産を広めた三森孔子の素顔』ぐるーぷ・はなみずき 1993年
林弘平『ラマーズ法決定版 いきまずに赤ちゃんが産める やさしいお産・らくなお産』主婦の友社 1993年
* 藤田真一『お産革命』朝日新聞社、1979年

もう一度検索