ラムソン719作戦

ラムソン719作戦：ベトナム戦争における南ベトナム軍の試練

ラムソン719作戦は、1971年2月から3月にかけて南ベトナム軍によってラオス南東部で実施された軍事作戦です。アメリカ軍は兵站、航空支援、砲兵支援を提供しましたが、地上部隊のラオス領内への投入は禁じられていました。作戦の目的は、北ベトナム軍（PAVN）の補給路であるホーチミン・ルートを遮断し、北ベトナム軍の攻勢を阻止することでした。

作戦の背景

1959年から1970年にかけて、ホーチミン・ルートは北ベトナムから南ベトナム解放民族戦線（ベトコン）への重要な補給路となっていました。アメリカ軍は1966年からホーチミン・ルートに対する空爆などの妨害作戦を行っていましたが、地上部隊による本格的な遮断作戦は行われていませんでした。

1971年、アメリカ軍は南ベトナムからの段階的な撤退を進めており、南ベトナム軍の自立が急務となっていました。ラムソン719作戦は、南ベトナム軍が単独で効果的に作戦遂行能力があるかを試す試金石として位置づけられました。アメリカ軍司令部は、作戦が成功すれば、北ベトナム軍の補給を12〜18ヶ月遅らせることができ、その間に南ベトナム軍の防衛体制を強化できると考えていました。

作戦計画

1970年12月、アメリカ軍と南ベトナム軍は、南東部ラオスへの越境攻撃の可能性について協議しました。作戦は4段階で構成され、まずアメリカ軍が国境付近を制圧し、陽動作戦を展開。次に、南ベトナム軍の装甲部隊が国道9号線に沿ってラオスのチェポネを目指して進撃します。チェポネを制圧した後、北ベトナム軍の補給基地を破壊し、最終的に南ベトナム軍は撤退するという計画でした。

しかし、南ベトナム軍の情報保全の甘さから、作戦計画は事前に北ベトナム側に漏洩。また、南ベトナム軍の指揮系統の混乱や、部隊間の連携不足も作戦の遂行に支障をきたしました。

作戦の経過

1971年2月8日、アメリカ軍の砲撃と空爆の後、南ベトナム軍はラオス領内への侵攻を開始しました。当初、南ベトナム軍は抵抗を受けずに進撃しましたが、間もなく北ベトナム軍の激しい反撃に遭遇します。北ベトナム軍は砲兵、戦車、歩兵を投入し、南ベトナム軍の拠点を次々と攻撃。南ベトナム軍は補給路を遮断され、孤立した拠点は次々と陥落しました。

3月3日、南ベトナム軍はチェポネへの空挺作戦を強行しましたが、北ベトナム軍の激しい砲撃により大きな損害を受けます。3月9日、チュー大統領は南ベトナム軍に撤退を命令。撤退は混乱を極め、南ベトナム軍は多数の死傷者と装備の損失を出しました。3月25日までに、南ベトナム軍はラオスから撤退し、ラムソン719作戦は失敗に終わりました。

作戦の結果と影響

ラムソン719作戦は、南ベトナム軍にとって大きな打撃となりました。南ベトナム軍は精鋭部隊を多数失い、士気は低下。また、作戦の失敗は、南ベトナム軍の自立能力に対する信頼を失墜させ、ベトナム化政策の失敗を決定づける結果となりました。

一方、北ベトナム軍にとって、ラムソン719作戦の勝利は、その後の攻勢を成功させるための自信につながりました。作戦後、北ベトナム軍はホーチミン・ルートをさらに拡張し、1972年のイースター攻勢へと繋げていきます。

ラムソン719作戦は、ベトナム戦争の帰趨を左右する重要な転換点となりました。南ベトナム軍の弱点を露呈し、アメリカ軍の撤退を加速させ、最終的な北ベトナムの勝利への道を開いたと言えるでしょう。

もう一度検索