ララカオンの戦い

ララカオンの戦い：ビザンツ帝国の転換点

ララカオンの戦いは、863年に現在のトルコ北部のララカオン川付近で、ビザンツ帝国と小アジアに侵攻したアラブ軍との間で行われました。この戦いは、ビザンツ帝国にとって東部国境における脅威を排除し、その後の東方での攻勢の時代を築く上で重要な転換点となりました。

背景：アラブとビザンツ帝国の国境紛争

7世紀以降、イスラム勢力は急速に拡大し、ビザンツ帝国の領土は小アジア、バルカン半島南部、イタリアの一部に限定されました。ビザンツ帝国はイスラム国家にとって主要な敵対勢力であり続け、8世紀から9世紀にかけて、アラブ軍による小アジアへの襲撃が頻繁に行われました。

ビザンツ帝国は長らく守勢に立たされていましたが、842年以降、アッバース朝の軍事的脅威が弱まり、帝国の東部辺境では半独立的なアラブ人アミールによる政権が台頭しました。これにより、ビザンツ帝国は徐々に自ら行動を起こせるようになりました。

850年代には、ウマル・アル＝アクタが統治するメリテネのアミール領がビザンツ帝国にとって最大の脅威となりました。860年には、ウマルとカルベアスが小アジア深部まで襲撃し、略奪品を持ち帰りました。さらに、アリー・アル＝アルマニー率いるタルスースの軍隊による襲撃や、シリアのアラブ海軍によるアッタレイアの略奪も発生しました。

863年のアラブ軍の侵攻

863年の夏、ウマルはアッバース朝の将軍と協力してカッパドキアへの襲撃を成功させました。アラブ軍はテュアナに近づくまで略奪を繰り返しながら進軍し、ビザンツ軍と衝突しました。激戦の末、アラブ軍はビザンツ軍から逃れ、テマ・アルメニアコンの地に入って襲撃を続け、黒海沿岸のアミソスを略奪しました。

戦闘の経過

アミソスの陥落を知ったビザンツ皇帝ミカエル3世は、叔父のペトロナスとナサルに大軍を編成させました。ビザンツ軍は三方からアラブ軍に接近し、9月2日にララカオン川付近でウマルの軍隊を包囲しました。翌日、ウマルはペトロナスの陣へ攻撃を仕掛けましたが、ビザンツ軍は持ちこたえ、別働隊がアラブ軍の側面と後方を攻撃しました。アラブ軍は壊滅し、ウマルも戦死しました。

戦闘の余波と政治的影響

ビザンツ帝国は勝利に乗じてアラブ人が支配するアルメニアへ侵攻し、アリー・アル＝アルマニーを殺害しました。これにより、ビザンツ帝国は東部辺境に存在する最も危険な敵対勢力を排除することに成功しました。ララカオンの戦いでの勝利は、ビザンツ帝国による東方での100年にわたる攻勢の始まりを告げるものでした。

東方の脅威が取り除かれたことで、ビザンツ帝国は西方のブルガリアへの対応に集中できるようになりました。ビザンツ帝国はブルガリアへ侵攻し、ブルガリアの支配者にビザンツ帝国の布教を受け入れるように迫りました。その結果、ブルガリアはビザンツ帝国の影響を受けた東方キリスト教世界に吸収されていきました。

文化的な影響

ララカオンの戦いは、ビザンツ帝国の叙事詩や物語にも影響を与えました。例えば、現存する最古のアクリティカ歌謡の一つである『アルムリスの歌』は、この戦いに着想を得たとされています。また、アラブやトルコの叙事詩にも、この戦いの影響が見られます。

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