ランシット・インターナショナルボクシングスタジアム

ランシット・インターナショナルボクシングスタジアムは、タイのパトゥムターニー県タンヤブリー郡にあるランシット市に所在する、タイ国内でも有数の規模を誇るムエタイ競技施設です。タイ語での正式名称は「สนามมวยนานาชาติเวทีมวยรังสิต」と記されます。

設立と歴史的変遷

このスタジアムは、1962年に当時のパトゥムターニー県知事であったプラシット・ウライラット氏の発案と主導により設立されました。設立の背景には、タイの国技であり文化遺産でもあるムエタイを、より多くの人々に普及・振興させたいという強い願いがありました。

設立当初の施設から、ランシットスタジアムは一度の移転を経て、1970年に新たな装いでリニューアルオープンを果たしました。これにより、より近代的な設備を備え、大規模な興行に対応できるようになりました。その後も施設の維持・管理は続けられ、2010年にはさらなる大規模な改修工事が行われ、観客席の快適性や試合運営の環境が一層向上されました。

ムエタイ界における重要性

ランシット・インターナショナルボクシングスタジアムは、タイ国内の主要なムエタイ興行場の一つとして、非常に重要な位置を占めています。ここで開催されるプロ公式試合は、世界ムエタイ評議会（WMC）によって公認されており、その結果は世界のムエタイ選手のランキングに大きな影響を与えます。そのため、世界中のトップ選手や有望な若手選手が、自身のキャリアを築くためにこのリングを目指します。

また、プロの試合だけでなく、国際アマチュアムエタイ連盟（IFMA）が主催する国際的なアマチュア大会やイベントの開催地としても利用されています。これにより、アマチュア選手の国際交流や育成の場としても機能しており、ムエタイの裾野を広げる役割も担っています。2010年までの記録だけでも、このスタジアムでは8万試合を超えるプロムエタイの試合が開催されたとされており、その活動量と歴史の重みが伺えます。

日本人選手との関わり

ランシットスタジアムは、日本のムエタイ関係者や選手にとっても馴染み深い場所です。過去には多くの日本人選手がこのリングに上がり、タイの強豪選手たちと拳を交えてきました。

- 立嶋篤史選手: 1987年、当時15歳だった立嶋選手がここでプロデビュー戦（非公式試合）を行いました。若くしてタイの主要スタジアムで経験を積んだ一例として知られています。
- 志朗選手: 2013年には、志朗選手がランシットスタジアム認定の初代インターナショナル・バンタム級王座を獲得しました。これは、日本人選手がタイの主要スタジアムの王座タイトルを獲得した初期の歴史的な快挙の一つです。
- KICK REVOLUTION: 2014年には、日本対タイの対抗戦イベント「KICK REVOLUTION」がこのスタジアムで開催されました。このイベントでは、日本の選手団が5戦全勝という圧倒的な強さを見せ、日本のムエタイ・キックボクシング界のレベルアップを印象付けました。
- 吉成名高選手: 2016年には、後にラジャダムナンスタジアムの王座を獲得するなど歴史を塗り替える活躍を見せる吉成名高選手も、このスタジアムで試合に出場しています。

これらのエピソードからも分かるように、ランシットスタジアムは、タイのトップを目指す日本人選手にとって、自身の実力を試す重要な舞台であり続けています。

設立から現在に至るまで、ランシット・インターナショナルボクシングスタジアムは、ムエタイの伝統を守りつつ、新しい才能を育て、国内外にムエタイの魅力を発信し続けています。これからも多くの熱戦が繰り広げられ、ムエタイの歴史が刻まれていくことでしょう。

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