ランスの戦い

ランスの戦い：三十年戦争終結への一歩

1648年8月20日、フランス北部のランス近郊で、コンデ公ルイ2世率いるフランス軍とレオポルト枢機卿率いるスペイン軍との間で激戦が繰り広げられました。この戦いは、三十年戦争における大規模な戦闘としては最後のものであり、その後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えることになります。

戦いの背景

ランスは、当時スペイン領であったフランドル地方に位置する要塞都市でした。しかし、1647年以降、フランス軍によって占領されていました。フランス国内では、フロンドの乱と呼ばれる貴族による反乱が勃発しており、スペインはこの混乱に乗じてランスを奪回し、戦況を有利に進めようとしました。

戦闘の経過

コンデ公は、カタルーニャからフランドルまで急行し、途中のシャンパーニュ、ロレーヌ、パリで1万6千の軍勢を編成しました。この軍勢の半分以上は騎兵であり、18門の大砲が配備されました。一方、スペイン軍も騎兵が半分以上を占める1万8千の軍勢と38門の大砲を擁し、戦力ではフランス軍を上回っていました。両軍は対峙しましたが、スペイン軍は高地に陣を構えていました。

戦闘は、スペイン騎兵とフランス前衛との小競り合いから始まりました。この小競り合いは次第に激化し、全面的な戦闘へと発展しました。スペイン歩兵は、フランス近衛兵連隊を一時的に撃破しましたが、練度で勝るフランス騎兵がスペイン騎兵を打ち破り、戦局はフランス優位に傾きました。

戦いの影響

ランスの戦いの結果は、1648年のヨーロッパ情勢に大きな影響を与えました。

まず、この勝利はフランス王室と高等法院との対立を激化させ、フロンドの乱を長期化させる要因となりました。王室は、この勝利を背景に強硬姿勢をとり、貴族たちの反発を招いたのです。

次に、フランスの勝利は三十年戦争を終結させる決定的な要因となりました。テュレンヌ子爵、ウランゲル、ケーニヒスマルクの軍勢がウィーンとプラハを脅かし、神聖ローマ皇帝フェルディナント3世を動揺させました。皇帝の同盟者であったバイエルン選帝侯マクシミリアン1世も和平を望み、スペイン王フェリペ4世も主力軍を失っていたため、フェルディナント3世は講和を決意しました。1641年以降、神聖ローマ帝国はミュンスターでフランスと、オスナブリュックでスウェーデンと交渉を続けていましたが、1648年10月24日、ヴェストファーレン条約が締結され、三十年戦争は終結しました。ただし、フランスとスペインの戦争は、1659年のピレネー条約まで継続されました。

戦勝の代償

しかし、ランスの戦いにおけるフランスの勝利は、その後の様々な出来事によって無駄になってしまいました。ルイ14世は幼く、摂政アンヌ・ドートリッシュは国内を掌握できませんでした。その結果、戦後すぐにフランス国内で内戦が発生し、スペインに立て直しの時間を与えてしまうことになりました。戦勝を祝ってノートルダム大聖堂でテ・デウムが歌われた際には暴動が発生し、1649年1月にはルイ14世がパリからの逃亡を余儀なくされる事態となりました。

まとめ

ランスの戦いは、三十年戦争の終結を決定づける重要な戦いであった一方、その後のフランス国内の混乱を引き起こす一因ともなりました。この戦いは、勝利の代償、そして政治的安定の重要性を示す教訓として、歴史に刻まれています。

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