ランスティング (スウェーデン)

スウェーデンの地方自治体「ランスティング」：医療と住民福祉を支える組織

スウェーデンには、日本の広域連合に相当する地方自治体として「ランスティング (landsting)」が存在します。20のランスティング（うち18はランスティング、2つはリージョン）が、国と地方を繋ぐ役割を担っています。ただし、国や政府の地方機関であるレーンとは行政分野が異なり、ランスティングは主に地方自治を管轄しています。

ランスティングの主要業務：医療への集中

ランスティングの最も重要な業務は医療です。その財政の96％が保健関連に充てられており、例外を除くほとんどの医療機関はランスティングが運営しています。これは、スウェーデンの国民皆保険制度を支える重要な基盤となっています。

住民参加と地域特性：多様な行政施策

ランスティングの方針は、住民によって選出された議会によって決定されます。そのため、地域によって特色のある施策が展開されており、住民の意見が行政に直接反映されやすい仕組みとなっています。議会は、その決定を実行するために執行委員会や運営委員会などを設置し、長官職を置く場合もあります。この点からも、ランスティングは地方自治の典型と言えるでしょう。

レーンとの違い：役割分担と権限

レーンとランスティングは、地理的にはほぼ同じ範囲をカバーしますが、役割は異なります。レーンが法律や行政の許認可、警察などを管轄するのに対し、ランスティングは医療機関や福祉施設の運営といった、住民生活に密着した分野を担当します。

最大の相違点は、最高意思決定機関の規模です。レーンの最高議決機関は委員長を含む12名までですが、ランスティング議会は有権者数に応じて31名から149名と、はるかに大規模です。また、レーンの長は国と政府によって指名・任命されるのに対し、ランスティング議会の議長と副議長は、住民の直接選挙で選ばれた議員の中から互選で選ばれます。

ランスティングの起源：効率的な広域行政

ランスティングの成立には、複数の市が効率的な広域行政を行うために連合体を形成したという歴史的経緯があります。人口が少ない自治体では、単独では公立病院などの運営が困難なため、周辺自治体と協力してランスティングを設立したという見方もあります。この点からも、日本の広域連合と類似した組織形態と言えるでしょう。フィンランドにも、財政的な理由から特定行政分野で広域連合を形成する事例があり、それがランスティングに相当すると考えられます。ただし、フィンランドの広域連合は間接選挙によって構成員を選出します。

コミューンとの関係：対等な自治体

ランスティングは、スウェーデン語で「第二次コミューン (sekundärkommun)」とも呼ばれます。これは、市町村に相当するコミューンを「第一次コミューン (primärkommun)」と捉えた場合の呼称です。地理的にはレーンと同じ範囲を管轄しますが、法的にはコミューンの集合体であり、上位団体ではありません。コミューンとランスティングは、それぞれ人口規模や地域によって行政事務を分担する対等な関係にあると言えるでしょう。この関係は、1991年6月13日施行の市法（Kommunallag 法律番号 SFS 1991:900）に基づいています。

ランスティングの一覧

スウェーデンには、18のランスティングと2つのリージョンを含め、合計20のランスティングが存在します。レーンの数は21ですが、ゴットランド県は島嶼部であるため、レーンがランスティングの役割も兼ねています。

以下に、ランスティングの一覧を示します。（一覧は省略）

まとめ

ランスティングは、スウェーデンの地方自治において重要な役割を担う組織です。医療を中心とした住民福祉の向上に貢献しており、住民参加と地域特性を反映した多様な行政施策が展開されています。レーンとの役割分担やコミューンとの関係を理解することで、スウェーデンの地方行政システムをより深く理解できるでしょう。

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