ランプバス

ランプバスとは

ランプバス（Ramp Bus）は、空港施設内において、旅客ターミナルビルと駐機中の航空機の間で乗客を輸送するために運行される車両です。主に、航空機が搭乗橋（ボーディングブリッジ）に直接接続できない「沖止め」と呼ばれるスポットに駐機した場合や、空港施設の容量上の理由で搭乗橋が利用できない場合などに使用されます。これらのバスは空港の制限区域内のみを運行し、乗客が航空機へ乗り降りするための「動く通路」としての役割を担います。

運行の目的と利用シーン

空港における旅客輸送は、多くの場合搭乗橋を通じて直接航空機へアクセスすることが理想的です。しかし、空港の混雑状況、特定の航空機のサイズや設計、駐機スポットの位置、あるいは天候などの要因により、搭乗橋が利用できない状況が発生します。このような場合に、ランプバスが活躍します。

旅客はターミナルビル内の指定された搭乗ゲートからランプバスに乗車し、駐機している航空機まで移動します。到着した旅客は航空機からランプバスに乗り、ターミナルビルまで輸送されます。このシステムにより、搭乗橋の利用にかかわらず、効率的な旅客の乗降が実現されます。

車体構造の特徴

ランプバスの車体設計は、空港内での特殊な運用環境と乗客のニーズに合わせて最適化されています。主な特徴は以下の通りです。

低床構造: 多くの乗客、特に大きなスーツケースや手荷物を持つ旅客がスムーズに乗降できるよう、床が低く設計されています。これにより、ステップの段差が少なく、高齢者や障がいのある方、小さな子供連れの家族なども比較的容易に利用できます。
大型車体: 一度にできるだけ多くの乗客を輸送するため、一般の路線バスや観光バスと比較して大型の車両が採用されることが一般的です。これにより、ピストン輸送の効率が高まり、短時間で多くの乗客を運ぶことが可能になります。
広々とした車内: 座席数は限定的であるか、あるいは完全に立ち乗りを前提とした設計になっている車両もあります。これは、短距離・短時間の移動であり、最大限の乗客収容能力を確保するためです。車内には多くの手すりが設けられており、立ち姿勢でも安全に移動できるよう配慮されています。
荷物スペース: 大きな手荷物を持つ乗客が多いため、車内には比較的広いスペースが確保されているか、あるいは荷物を置くための簡易的な棚などが備えられていることがあります。ただし、一般的な長距離バスのように床下に大きな荷物室があるわけではありません。

これらの設計上の特徴は、空港という特殊な環境下で、大量の旅客を安全かつ迅速に輸送するというランプバスの役割を反映しています。

空港内での運行

ランプバスは空港の制限区域内、具体的にはエプロン（駐機場）やサービス道路などを走行します。これらの区域は一般車両の乗り入れが厳しく制限されており、航空機や他の地上支援車両（グランドハンドリング車両）が行き交う場所です。そのため、ランプバスの運転手は、空港内の特殊な交通ルールや航空機との安全距離、地上誘導員の指示などを遵守する必要があります。

運行は特定の航空便に連動しており、定時性が求められます。ターミナルと航空機の間の短い距離を往復するシャトル運行が基本となります。

空港リムジンバスとの違い

ランプバスと混同されやすい車両に「空港リムジンバス」がありますが、両者はその目的、運行範囲、車両特性において大きく異なります。

ランプバス: 空港敷地内の制限区域のみを走行し、旅客ターミナルと駐機中の航空機の間で旅客を輸送します。空港機能の一部として位置づけられます。
空港リムジンバス: 空港と市街地や近隣の主要駅、ホテルなどの間を走行し、空港へアクセス・出発する旅客を輸送します。主に公道を走行し、長距離移動を想定した快適な座席や大きな荷物室を備えています。

このように、ランプバスは空港内の特定の機能に特化した車両であり、空港全体の円滑な運営を支える上で欠かせない存在です。

もう一度検索