ランベス宮殿

ランベス宮殿：歴史と伝統が息づくカンタベリー大主教の公邸

ロンドンのテームズ川南岸、ウェストミンスター宮殿と向かい合う場所に位置するランベス宮殿は、イングランド教会カンタベリー大主教のロンドンにおける公邸です。カンタベリーには別の公邸（オールド宮殿）がありますが、ロンドンにおける主要な拠点として、長きに渡り歴史と伝統を刻んできました。

古代からの歴史と建築

元々はランベス・マナーまたはランベス・ハウスと呼ばれていたこの地を、1200年頃カンタベリー大主教が取得しました。現在も残る最古の建物は、古イングランド様式で建てられた礼拝堂です。1435年から1440年にかけて建設されたロラード塔は、17世紀には監獄として使用されていたという歴史も持ちます。

宮殿の大広間は、17世紀中期のイングランド内戦において、オリバー・クロムウェルの軍によって略奪されましたが、王政復古後の1663年に修復されました。宮殿全体はイギリス指定建造物1級に指定されており、その歴史的価値の高さが認められています。特に、胸壁のある門はハンプトン・コート宮殿の時計塔を思わせるチュードル様式の建築様式が特徴的です。

ランベス会議：世界的な聖公会会議の開催地

ランベス宮殿は、アングリカン・コミュニオン（聖公会）の主教たちが10年ごとに集まるランベス会議の開催地としても有名です。1867年の初回開催以来、長年この宮殿で会議が行われてきました。しかし、参加者数の増加に伴い、近年はケント大学カンタベリー校で開催されるようになりました。会議の名称は変わることなく、その歴史と伝統は受け継がれています。

ランベス宮殿図書館：イングランド教会の貴重な記録

宮殿内には、カンタベリー大主教のランベス宮殿図書館があります。ここはイングランド教会の重要な記録を保存する重要な施設であり、1610年にリチャード・バンクロフト大主教によって公共図書館として設立されました。数多くの貴重な史料が保管されており、教会史研究にとってかけがえのない存在です。

セント・メアリー・アト・ランベス教会と庭園博物館

宮殿構内には、セント・メアリー・アト・ランベス教会もあります。聖塔は1377年のもので、他の部分は1851年に増築されました。1972年に教会としての使用は中止されましたが、現在は庭園博物館として新たな役割を担っています。歴史的建造物を活かした博物館として、多くの人々を引きつけています。

まとめ

ランベス宮殿は、単なる建物ではなく、イングランド教会の歴史、伝統、そして国際的な宗教交流の象徴です。歴史的建造物、貴重な図書館、そしてランベス会議という歴史的イベントを通して、その存在感は世界中に知れ渡っています。テームズ川沿いのその景観は、ロンドンの歴史的魅力を象徴する重要な場所の一つと言えるでしょう。

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