リアリティ (デヴィッド・ボウイのアルバム)

デヴィッド・ボウイの26作目にあたるスタジオ・アルバム、『リアリティ』（Reality）は、2003年9月にISOコロムビアより世界に向けてリリースされました。日本ではソニーミュージックが販売を手掛けました。前作『ヒーザン』からわずか1年3ヶ月という、ボウイのキャリアにおいては比較的短いインターバルで届けられた作品です。

プロデュースは、前作でも成功を収めたトニー・ヴィスコンティが共同で担当しており、ボウイとの揺るぎない信頼関係がサウンドの基盤となっています。本作は、その後のボウイのキャリアを考える上で、重要な意味を持つ作品となりました。

収録された楽曲のテーマは、主にニューヨークをはじめとする都市に着想を得ています。しかし、それぞれの曲は個性を持ち、多様なサウンドスケープを描き出しています。また、先行するツアーで培われたライブパフォーマンスのダイナミズムが、楽曲にもエネルギッシュなエッセンスとして取り入れられています。オリジナル曲に加え、ジョナサン・リッチマン、ロニー・スペクター、ジョージ・ハリスン、ザ・キンクス（ボーナストラック）といった、様々なジャンルのアーティストの楽曲カバーに挑戦している点も特筆すべきです。

アルバム発表後、ボウイは「リアリティ・ツアー」と題された大規模なワールドツアーに乗り出しました。このツアーは世界各地で精力的に行われ、多くのファンを魅了しました。ツアー中のアイルランド、ダブリンでの公演は映像作品として記録され、後にDVDとしてリリースされています。

日本国内では、収録曲「ネヴァー・ゲット・オールド」がシングルカットされ、ミネラルウォーター「ヴィッテル」のテレビコマーシャルに起用されたことで、広く認知されました。

しかし、このツアーの途中で予期せぬ事態が発生します。2004年6月、ドイツのハンブルクへ向かう移動中に、ボウイは動脈瘤による心臓の痛みを訴え、急遽入院することになりました。この健康上の問題により、ツアーは残りの日程を全てキャンセルせざるを得なくなりました。

この出来事は、その後のボウイの音楽活動に大きな影響を与えました。回復後、彼はしばらく創作活動に対して以前ほどの積極性を見せなくなり、次作『ザ・ネクスト・デイ』が発表されるまで、約10年という長いブランクが生じることになったのです。『リアリティ』は、結果として、この長期休止前の最後のオリジナル・アルバムとなりました。

本作に収録された主な楽曲は以下の通りです。（括弧内は作詞・作曲者）

ニュー・キラー・スター (デヴィッド・ボウイ)
パブロ・ピカソ (ジョナサン・リッチマン, デヴィッド・ボウイ)
ネヴァー・ゲット・オールド (デヴィッド・ボウイ)
ザ・ロンリエスト・ガイ (デヴィッド・ボウイ)
ルッキング・フォー・ウォーター (デヴィッド・ボウイ)
シール・ドライヴ・ザ・ビッグ・カー (デヴィッド・ボウイ)
デイズ (デヴィッド・ボウイ)
フォール・ドッグ・ボムズ・ザ・ムーン (デヴィッド・ボウイ)
トライ・サム・バイ・サム (ジョージ・ハリスン)
リアリティ (デヴィッド・ボウイ)
ブリング・ミー・ザ・ディスコ・キング (デヴィッド・ボウイ)

リリースされたエディションによっては、ザ・キンクスのカバー「ウォータールー・サンセット」や、ボウイ自身の別テイク、リミックスなどのボーナストラックが追加収録されています。

アルバム制作には、ボウイ自身を含む多くのミュージシャンが参加しました。

デヴィッド・ボウイ：ヴォーカル、キーボード、ギター、サックス
アール・スリック：ギター
マイク・ガーソン：キーボード
デヴィッド・トーン：ギター
ゲイル・アン・ドーシー：ベース、バッキング・ヴォーカル
スターリン・キャンベル：ドラム
キャサリン・ラッセル：バッキング・ヴォーカル
トニー・ヴィスコンティ：ベース、ギター、キーボード、バッキング・ヴォーカル
ジェリー・レオナルド：ギター
マーク・プラティ：ギター
カルロス・アロマー：ギター

『リアリティ』は、ボウイがライブ活動を含め精力的にキャリアを展開していた時期の集大成であるとともに、その後の長い静寂期へと繋がる、予期せぬ出来事を伴った記念碑的な作品と言えるでしょう。

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