リア・トーマス

リア・トーマス：トランスジェンダーアスリートの先駆者と議論の的

リア・キャサリン・トーマス（Lia Catherine Thomas）は、1999年生まれのアメリカ人競泳選手です。ペンシルベニア大学に在籍中、男子水泳チームから女子チームへと移籍し、2022年NCAAディビジョン1の全米選手権女子500ヤード自由形で優勝。トランスジェンダーであることを公表し、かつNCAAで優勝した初の選手として歴史に名を刻みました。しかし、その活躍は同時に、トランスジェンダー女性のスポーツ参加を巡る激しい議論を巻き起こしています。

生い立ちとカミングアウト

テキサス州オースティン出身のトーマスは、5歳から水泳を始め、高校時代には州大会で6位入賞を果たしました。高校生活の終わり頃から自身のジェンダー・アイデンティティに悩み始め、大学2年生の夏に家族にカミングアウト。2020年1月1日より、リアという新しい名前を使い始めました。

スポーツ・イラストレイテッドのインタビューでトーマスは、「自分の名前が、自分がだれなのかが、自分が自分を生きているということが、完全にしっくりきた」と語っています。

水泳選手としてのキャリア

2017年から2020年までペンシルベニア大学の男子水泳チームに所属し、1,000ヤード自由形では全米6位の記録を出すなど、その才能を発揮しました。2019年5月からホルモン補充療法を開始し、2021-2022年シーズンには女子チームに移籍。

ホルモン療法の影響で筋力や筋肉量が低下し、タイムは一時的に落ち込みましたが、2022年3月のNCAA全米選手権女子500ヤード自由形で見事優勝を果たしました。しかし、この優勝は、トランスジェンダー女性のスポーツ参加の是非を巡る議論に火を付けることとなります。

論争と課題

トーマスの活躍は、保守的なメディアから批判を受け、競技資格に対する異議申し立てや、チームメイトからの反発など、多くの論争を呼びました。一方、彼女を支持する声も多く、スポーツ界内外で様々な意見が飛び交いました。

国際水泳連盟（FINA）は、2022年6月にトランスジェンダー女性の女子競技への参加を制限する新方針を発表。これにより、トーマスの2024年パリオリンピック出場は困難となりました。

スポーツ界におけるインクルージョン

リア・トーマスの事例は、スポーツ界におけるトランスジェンダー選手のインクルージョンという複雑な問題提起となりました。競技の公平性、安全性の確保、そしてトランスジェンダー選手の権利尊重。これらのバランスをどのように取るべきか、スポーツ界全体で議論を深めていく必要があります。

トーマスは現在ロースクールへの進学を準備しており、人権派弁護士を目指しています。また、オリンピック出場への意欲も示しており、今後の動向が注目されます。

彼女の存在は、スポーツ界における多様性とインクルージョンを考える上で、重要な一石を投じたと言えるでしょう。

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