リウトガルト・フォン・ザクセン (東フランク王妃)

リウトガルト・フォン・ザクセン：東フランク王妃、激動の時代を駆け抜けた女性

リウトガルト・フォン・ザクセン（845年頃 - 885年11月17日）は、9世紀の東フランク王ルートヴィヒ3世の妃として、その生涯を政治的激動の中で過ごしました。彼女は、後のザクセン朝の祖となるリウドルフィング家の始祖、ザクセン公リウドルフとオーダ・フォン・ビルングの間に、840年から850年の間に生まれたと考えられています。

生涯：政治的野心と強い意志

リウトガルトは単なる王妃ではなく、強い意志と政治的野心を兼ね備えた女性でした。彼女は夫であるルートヴィヒ3世の信頼できる支持者であり、その政治手腕は、ロートリンゲンをめぐる西フランク王ルイ2世との争いにおいて発揮されました。この紛争は、876年のアンダーナッハの戦いでクライマックスを迎え、最終的には880年のリブモント条約の締結によって、東フランク王国がロートリンゲンを獲得するという形で終結しました。リウトガルトの政治的洞察力と交渉力は、この重要な局面において大きな役割を果たしたと考えられています。

結婚と家族：カロリング家とシュヴァーベン家との繋がり

リウトガルトは、874年11月29日以前に、アシャッフェンブルクで東フランク王ルートヴィヒ3世と結婚しました。二人の間には、以下の子が生まれました。

ルイ（876年 - 879年）：フランクフルト王宮の窓から転落し、夭折。
ヒルデガルト（875/81年 - 900年以降）：フラウエンキームゼー修道院の修道女。

ルートヴィヒ3世の死後、リウトガルトは882年にシュヴァーベン地方の有力貴族であるブルヒャルト1世・フォン・シュヴァーベンと再婚し、さらに3人の子供をもうけました。この再婚は、カロリング家との繋がりだけでなく、シュヴァーベン地方との関係を深めることにも繋がりました。

ブルヒャルト2世（883/4年 - 926年）：シュヴァーベン大公。
ウダルリヒ（884/5年 - 885年）：夭折。
ディートピルヒ（テオベルガ）：フパルト・フォン・ディリンゲン（909年没）と結婚。アウクスブルク大司教ウルリヒの母。

リウトガルトの子供たちは、その後の歴史において重要な役割を果たしました。特に、ブルヒャルト2世はシュヴァーベン大公として勢力を拡大し、その子孫は後の神聖ローマ帝国の歴史にも深く関わっていきます。また、ディートピルヒの息子であるウルリヒは、アウクスブルク大司教として聖人となり、カトリック教会において重要な存在となっています。

リウトガルト・フォン・ザクセンは、東フランク王妃として、また、二つの名門貴族の母として、中世初期のヨーロッパの歴史に深く刻まれた女性でした。彼女の生涯は、政治的な駆け引きと家族の繋がりが複雑に絡み合った、激動の時代の縮図とも言えるでしょう。

参考文献

Widukind of Corvey (2014). Deeds of the Saxons. Catholic University of America Press

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