リガ攻勢

リガ攻勢は、第一次世界大戦中にドイツ軍がロシア軍に対して行った攻勢作戦であり、1917年 9月1日から4日にかけて行われました。この戦いでドイツ軍は、リガを占領しロシア軍を撃退することに成功しました。

背景

1915年8月以降、ドイツ軍がリガ前面で停止した後、ロシア軍はリガに橋頭堡を築き、ドイツ軍の北翼を脅かしていました。ロシア帝政が倒れた後の1917年夏、ロシア軍はガリツィアで攻勢を試みましたが、中央同盟軍の反撃により失敗。ドイツ軍は、この状況を利用して、リガ橋頭堡の攻略を計画しました。

ドイツ軍のルーデンドルフは、東部戦線での兵力をリガ攻略に集中させることを決定。その目的は、サンクトペテルブルク街道付近でのロシア軍に対する決定的な勝利と、それによる兵力の西部戦線への転用でした。また、リガ攻略は、ガリツィアで敗北したロシア軍の厭戦気分を助長し、ロシアを講和に傾かせる狙いもありました。

作戦計画

ドイツ軍の作戦計画は、以下の通りでした。

1. ドビナ川を急襲渡河し、ロシア軍をプレスコウ方面の鉄道と街道から遮断する。
2. リガ西北方の道路上で予想されるロシア軍の抵抗を迅速に打破する。
3. リガ橋頭堡のロシア軍師団を包囲殲滅する。
4. リガ付近のロシア軍予備隊の到着を阻止する。
5. 右翼で陽動渡河攻撃を実施し、ロシア軍を誘引する。

両軍の態勢

攻撃を担当したドイツ第8軍は、3個師団を増援として投入。さらに、3個軍団司令部を含む多数の部隊をガリツィア戦場から増援されました。ドイツ軍は重迫撃砲、中迫撃砲、軽迫撃砲を多数配備し、砲兵部隊を集中運用しました。砲兵隊の指揮はゲオルク・ブルフミュラー大佐が執り、突破正面の全砲兵を統括しました。

一方、ロシア軍はパルスキー指揮下の第12軍がリガ橋頭堡を防衛。第6シベリア軍団、第2シベリア軍団、第13後備軍団で構成されていました。ロシア軍は、3重の陣地線を構築していましたが、ドイツ軍の砲撃により大きな損害を受けました。

経過

9月1日

ドイツ軍は、計画通り午前4時にガス砲撃を開始しました。毒ガス弾は20,650発に達し、濃霧も相まってロシア軍に大きな混乱を引き起こしました。午前6時には、ロシア軍歩兵陣地への効力射撃を開始。ロシア軍砲兵は制圧され、応戦する者は少なかった。午前8時40分にはボルコウィッツ島を占領。午前9時12分、歩兵が渡河を開始し、戦闘機が低空飛行でロシア軍を攻撃しました。午前10時には、ドイツ軍はリガ―オーゲル鉄道線を突破。特に第14バイエルン猟兵師団は、迅速に北方に進撃し、午後1時までにイックスキュール停車場付近まで到達。小エーゲル河の線への進撃を試みましたが、渡河点を確保できませんでした。

9月2日

早朝の空中偵察により、ロシア軍がリガ橋頭陣地から撤退していることが確認されました。ドイツ軍右翼兵団はドビナ河を渡河後、前進を開始。ロシア軍の反撃を撃退しました。ドイツ中央兵団は、小エーゲル河地区でロシア軍と激戦を繰り広げましたが、最終的にはロシア軍を撃退。ドイツ左翼兵団はリガを目指して前進しましたが、湿地帯とロシア軍の砲撃により、前進は困難を極めました。しかし、夕方にはリガに接近。ロシア第12軍司令官パルスキーは、全軍に退却を命じ、リガの二つの橋を爆破しました。

9月3日

ドイツ右翼兵団は守備に徹し、ドイツ中央兵団は前進を続け、ツンシユッペ河の線に到達。ドイツ左翼兵団は、ついにリガを占領しました。

9月4日

ドイツ中央兵団はリガ―ウェンデンの大街道に到達。ロシア軍は東北方面に潰走し、ドイツ軍は多数の鹵獲品を得ました。

結末

ドイツ軍はリガを占領し、ロシア軍は完全に退却しました。ドイツ軍は捕虜8,000人、火砲262門、機関銃150挺を鹵獲。一方、ドイツ軍の損害は死傷者42,000人と、第一次大戦の基準からすれば軽微でした。フーチェルの勝利は最高統帥部に深い印象を与え、ルーデンドルフは西部戦線での大攻勢を計画することになりました。フーチェルとブルフミュラーは、この大攻勢の準備のため西部戦線に異動しました。

この戦いでは、特に砲兵、とりわけ毒ガス弾が大きな効果を発揮しました。ドイツ軍の使用したガス弾は116,400発にも達しました。ブルフミュラーの砲兵部隊の活躍は、ドイツ軍の勝利に大きく貢献したと評価されています。

リガ攻勢は、戦術レベルというよりも、作戦レベルにおいて、後のドイツ軍の攻勢のモデルとなりました。敵部隊の奇襲、弱点への精鋭部隊の集中、縦深突破による包囲は、その後のドイツ軍の作戦に大きな影響を与えました。しかし、リガの戦いの本質は、ドイツ軍の長年の作戦術の延長線上にあるものであり、この戦いが無かったとしても、1918年のドイツ軍の攻勢は同じような作戦的性格を持っていただろうという指摘もあります。

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