リケーブル

リケーブルとは

リケーブルとは、オーディオ機器の中でも特にヘッドホンやイヤホンにおいて、音質改善を目的として、元々付いているケーブルを別のケーブルに取り替えることを指します。 据え置き型のオーディオ機器では、スピーカーケーブルやラインケーブルは容易に交換できますが、これらはリケーブルとは呼ばれません。

リケーブルの概要

リケーブルの目的は、他のオーディオ機器と同様に、信号線をグレードアップすることで音質の改善や向上を図ることです。グレードアップの際には、純度の高い銅や銀を使用したケーブルが選ばれることが多く、例えば、銅では無酸素銅(OFC)や高純度無酸素銅(OCC)などが用いられます。純度の単位はNで表され、4Nは純度99.99%、5Nは純度99.999%を意味します。また、銅に特殊な加工を施したPC-Triple Cや、クライオ処理(超低温処理)を施したケーブル、グラフェンを用いたケーブルなども存在します。

イヤホンやヘッドホン側のコネクタ、機器側のコネクタには様々なタイプがあり、主要なメーカーのケーブルは、同じ線種でもコネクタ別に複数の製品が用意されています。

リケーブルの歴史

従来のヘッドホンやイヤホンは、本体とケーブルが直接接続されているものがほとんどで、音質改善のためにケーブルを交換することは想定されていませんでした。しかし、2000年代後半から高価格帯のヘッドホンやイヤホンが普及し、ケーブルを取り外せる機種が増加したことで、2011年頃から「リケーブル」という単語と概念が認識されるようになりました。

アルティメット・イヤーズのSuper.fi 5 Proや10 Proなどは、2006年の発売当初からケーブルの取り外しが可能でした。これらの機種では、純正ケーブルを交換することで音質が大幅に向上するため、当初はDIYでケーブルを自作するユーザーも現れました。初期には電子部品工作用のコンタクトピンなどが代用されましたが、その後、Null Audioなどのメーカーからリケーブル製品や接続端子部品が市場に出回るようになりました。

2010年代以前から、カスタムIEM(インイヤーモニター)では、複数のメーカーで共通の2ピンタイプのコネクタが標準となっていました。ウェストンやアルティメット・イヤーズなど、IEMを製造するメーカーが2ピンタイプのコネクタでケーブル接続できる製品を投入し、2011年にはShureがMMCX端子を採用した製品を発売したことで、他のイヤホンメーカーもMMCX端子によるリケーブル対応製品を多数投入しました。2015年以降、様々なメーカーやブランドからリケーブル製品が発売されています。

リケーブルの規格

リケーブルで使用されるコネクタには、様々な規格が存在します。

アルティメットイヤーズ用2ピン端子: Super.fi 10 Proや5 Proなどで採用されていましたが、UE900以降はMMCXに移行したため、採用製品は少なくなっています。カスタムIEM向け2ピンとはピンの太さやピッチが異なり、左右で信号線とグラウンド線の向きが異なります。
アルティメットイヤーズ IPXコネクタ: 2018年4月以降のUE社製品に採用されています。
カスタムIEM向け2ピン端子: 初期のカスタムIEM製品に多く採用され、ユニバーサルIEM製品にも採用されています。ウェストン、JH audio、Heir Audio、Noble Audio、Earsonics、1964ears、Unique Melodyなどが採用しています。
MMCX: 2011年にShure SEシリーズで採用されて以来、多くのメーカーが採用しています。Shure、ウェストン、アルティメットイヤーズ、ULTRASONE、フェンダーなどが採用しています。
mini-XLR: AKG、パイオニアなどが採用しています。
ゼンハイザーHDシリーズ用: HD650用とHD800用があり、それぞれ対応する機種が異なります。
エティモティック・リサーチER-4シリーズ用、FitEar用、JH audio用など、特定のメーカーや機種に対応したコネクタもあります。
オーディオテクニカ A2DCコネクター
日本ディックス製 Pentaconn ear: ゼンハイザー、アコースチューンなどが採用しています。

ヘッドホン・イヤホンプラグ側

ヘッドホンやイヤホンを接続する機器側には、通常は3極TRSコネクタが用いられますが、一部機器では左右の接地が分離されたバランス接続に対応したXLRコネクタや4極TRRSコネクタなどが用いられます。リケーブルすることで、それぞれのコネクタに対応した機器に接続できるようになります。バランス接続に対応した製品にリケーブルするメリットは、左右の接地を分離することでチャンネルセパレーションが向上し、音場感の表現が向上することです。

主なプラグの種類

6.3mm3極ステレオプラグ
4.4mm5極バランス接続プラグ: 2016年にJEITAが規格化し、SONY WALKMANが初採用機種を投入したことで、ハイエンドオーディオの標準となりつつあります。
3.5mm3極ステレオプラグ
2.5mm4極バランス接続プラグ: 2014年にAKシリーズが採用して以来、ポータブルオーディオ機器におけるバランス接続の標準となりつつあります。
2.5mm2極プラグ×2: 左右別々になります。
XLR 3極: ステレオの場合、左右別々になります。
XLR 4極
IRIS角型4極コネクター: ごく一部の機器で採用されています。

主なリケーブルメーカー・ブランド

2016年時点での主なリケーブルメーカー・ブランドには、以下のようなものがあります。

ALO audio
BEAT AUDIO
Bispa
Effect Audio
estron
Labkable
NOBUNAGA Labs
Null Audio
onso
SAEC
Song's-Audio
* ZEPHONE

これらのメーカーは、高品質なケーブルやコネクタを提供し、オーディオファンの間で高い評価を得ています。

まとめ

リケーブルは、ヘッドホンやイヤホンの音質を向上させるための有効な手段です。様々なコネクタ規格やケーブルの種類が存在するため、自分の機器や好みに合ったケーブルを選ぶことが重要です。リケーブルによって、オーディオ体験をさらに深く楽しむことができるでしょう。

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