リゲル (犬)

タイタニック号とリゲルの物語：真実と虚構

1912年4月15日、豪華客船タイタニック号は氷山に衝突し、沈没しました。この悲劇的な事故の中で、一匹の犬が人々の記憶に深く刻まれています。ニューファンドランド犬のリゲルです。

リゲルは、タイタニック号の乗客の一人であるウィリアム・マードック一等航海士の愛犬だったと伝えられています。沈没事故では、リゲルは海に投げ出されました。しかし、奇跡的に生き延び、一艘の救命ボート付近を泳ぎ続けました。

リゲルの活躍？

生存者救助に駆け付けたカルパチア号が到着した際、疲労困憊の生存者たちは救命ボートに気づきませんでしたが、リゲルは力強く吠え続け、その存在をカルパチア号の乗組員に知らせたとされています。その吠え声は、カルパチア号の船長アーサー・ロストロンの耳にも届き、船長はすぐに救命ボートを発見、生存者全員を救助しました。

さらに、リゲルは体格が大きかったため、カルパチア号の乗組員ジョナス・ブリッグスが工夫を凝らして救助したとされています。ブリッグスはその後、リゲルを引き取ったという証言が残っています。

物語の裏側：史実と矛盾

リゲルの物語は、ニューヨーク・ヘラルド紙やウォルター・ロードの著書『タイタニック号の最期』などでも取り上げられ、広く知れ渡りました。しかし、この物語には多くの疑問点が残されています。

まず、カルパチア号の乗員名簿には「ジョナス・ブリッグス」という人物は存在しません。また、リゲルがそばを泳いでいたとされる救命ボートに乗っていた生存者たちは、誰も犬の存在について証言していません。これらの事実から、リゲルの物語は創作された可能性が高いとされています。

歴史的背景

タイタニック号には、16隻の木製救命ボートと4隻の折りたたみ式ボートが搭載されていました。リゲルが近寄ったとされるのは4号艇で、最後に出航した救命ボートでした。このボートには船員4名と女性と子供36名が乗っていました。

タイタニック号沈没事故は、世界に大きな衝撃を与え、多くの記録や証言が残されています。しかし、リゲルの物語のように、事実と異なる物語も数多く存在します。

結論

リゲルの物語は、タイタニック号沈没事故における人々の勇敢さと希望を象徴する美しい逸話です。しかし、現在のところ、その実在は確認されていません。この物語が事実か否かは別として、人々の心に勇気を与え、歴史を彩る物語の一つであることは間違いありません。多くの書籍や記事で取り上げられるリゲルの物語は、タイタニック号の悲劇と人々の記憶、そして真実と虚構が複雑に絡み合った興味深い事例として、これからも語り継がれていくでしょう。

参考文献

ジャック・ウィノカー 『SOSタイタニック号』（佐藤亮一訳、恒文社）
高島健 『タイタニックがわかる本』 成山堂書店
ダニエル・アレン・バトラー 『不沈 タイタニック 悲劇までの全記録』 （大地舜訳、実業之日本社）
ウォルター・ロード 『タイタニック号の最期』 （佐藤亮一訳、ちくま文庫）
* その他、関連書籍、ウェブサイト

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