リシャール2世 (ノルマンディー公)

リシャール2世 (ノルマンディー公)

リシャール2世（Richard II, 963年8月23日 - 1026年8月28日）は、10世紀後半から11世紀初頭にかけてのノルマンディー公であり、「善良公（Le Bon）」として知られています。父はノルマンディー公リシャール1世、母はグンノールであり、その長男として生まれました。

生涯

996年に父リシャール1世の死後、ノルマンディー公位を継承しました。当初、公位を継いだばかりのリシャール2世は若年であったため、父の異父弟であるラウル・ド・イヴリーが摂政として政治を代行しました。ラウルは強力な権力を握り、リシャール2世の治世初期に発生した農民の反乱を鎮圧しました。リシャール2世自身は信仰心が篤く、フランス王ロベール2世とは親交が深く、ロベールがブルゴーニュ公と対立した際には軍事的な支援を行いました。また、外交戦略として、妹アヴォワーズをブルターニュ公ジョフロワ1世に嫁がせ、自身もジョフロワの妹ジュディットと結婚し、ブルターニュとの同盟関係を強化しました。

1000年から1001年にかけて、イングランド王エゼルレッド2世の軍勢がコタンタン半島に侵攻しましたが、リシャール2世はこれを撃退しました。エゼルレッドはリシャール2世を捕らえてイングランドに連行しようとしましたが、ノルマン騎馬隊の迅速な対応により、イングランド軍は敗北しました。その後、リシャール2世は妹エンマをエゼルレッド2世に嫁がせることでイングランドとの関係改善を図りました。この結婚は、後のノルマンディー公ギヨーム（後のイングランド王ウィリアム1世）がイングランド王位継承を主張する上で重要な根拠となりました。また、この結婚は1013年にデンマーク王スヴェン1世がイングランドに侵攻した際、エゼルレッド2世がノルマンディーに亡命する一因となりました。エゼルレッドの死後、クヌート1世はエンマと結婚し、リシャール2世にクヌートのイングランド王位を承認するよう求めました。リシャール2世の治世を通じて、スカンジナビアのヴァイキングとの交流も続いていました。彼はヴァイキングの傭兵を雇い、最終的にはイングランドへ向かう途中のスヴェン1世と条約を結びました。

リシャール2世は自身の書記官であり聴罪司祭でもあったデュドン・ド・サン＝カンタンに、ノルマンディー公国を築いた先祖たちを、周囲の有力諸侯による不信行為の中で道徳的に正しくキリスト教徒として統治した人物として描くよう命じました。これはノルマン人の定住を正当化するための戦略であり、リシャール1世やギヨーム1世の治世を美化し、歴史的に信頼性の低い伝説も多く含まれています。

1025年と1026年には、リシャール2世は曽祖父ロロによるルーアンのサン＝トゥアン修道院への寄進を確認しました。リシャール2世による修道院への数々の寄進は、彼の支配領域がカーン、エヴルー、コタンタン、コーおよびルーアンにまで広がっていたことを示しています。リシャール2世は1026年8月28日に亡くなりました。

結婚と子女

リシャール2世は二度結婚しており、最初1000年頃にブルターニュ公コナン1世の娘ジュディットと結婚し、以下の子供をもうけました。

リシャール3世（1002/4年 - 1027年）：ノルマンディー公（在位：1026年 - 1027年）
アリス（アデライード）（1003/5年 - 1038年）：ブルゴーニュ伯ルノー1世と結婚
ロベール1世（1005/7年 - 1035年）：ノルマンディー公（在位：1027年 - 1035年）
ギヨーム（1007/9年 - 1025年）：フェカンの修道士
エレオノール（1011/3年 - 1071年以降）：フランドル伯ボードゥアン4世と結婚
マティルド（1013/5年 - 1033年）：フェカンの修道女

二度目にパピア・ダンヴェルムと結婚し、以下の二男をもうけました。

モージェ（1019年頃 - 1060年以前）：ルーアン大司教
ギヨーム（1020/5年 - 1054年以降）：アルク伯

リシャール2世は、その生涯を通じてノルマンディー公国の安定と発展に大きく貢献した人物でした。

参考文献

Detlev Schwennicke, Europäische Stammtafeln: Stammtafeln zur Geschichte der Europäischen Staaten, Neue Folge, Band II (Marburg, Germany: J. A. Stargardt, 1984)
The Normans in Europe, ed. & trans. Elisabeth van Houts (Manchester University Press, 2000)
François Neveux, A Brief History of The Normans (Constable and Robinson, 2008)
Eleanor Searle, Predatory Kinship and the Creation of Norman Power, 840-1066 (University of California Press, Berkeley, 1988)
David Crouch, The Normans: The History of a Dynasty (Hambledon Continuum, 2007)
David C. Douglas, William the Conqueror (University of California Press,1964)
The Gesta Normannorum Ducum of William of Jumièges, Orderic Vitalis, and Robert of Torigni, Ed. & Trans. Elizabeth M.C. Van Houts, Vol. I (Clarendon Press, Oxford, 1992)
Cassandra Potts, Monastic Revival and Regional Identity in Early Normandy, (The Boydell Press, 1997)

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