リスキーシフト

リスキーシフトについての考察

リスキーシフト（英: risky shift）とは、集団が意見を形成する際に見られる心理的現象の一つです。この言葉は、特に集団の意見が極端化し、危険度の高いアイデアが支持を集めやすくなることを意味します。この概念は1961年に社会心理学者のジェームス・A・F・ストーナーによって初めて報告されました。

リスキーシフトの概要

集団内では、常識的な意見や行動は目立たず、むしろ際立った具体的かつ非現実的な考えや行動が注目される傾向があります。このような環境では、個々のメンバーは、自己の意見となると頭を悩ますような極端な見解があった場合でも、他のメンバーからの賛同があれば意見を表明しやすくなります。このため、集団の合意形成においては、通常ならば選ばないような不適切な選択肢を選んでしまうリスクが増大します。

このリスキーシフトのメカニズムを理解するためには、個々のメンバーが集団内での発言によって自分の責任が軽減される感覚を持つことが重要です。つまり、集団全体での決定に影響を受けることで、個人としてのリスクを軽減できるため、彼らはより挑戦的な意見を持つようになります。これが、極端な意見への支持を促進する要因となります。

コーシャスシフトとの対比

リスクシフトの対になる現象として、「コーシャスシフト（cautious shift）」も存在します。これは、集団での意見交換を経て、初めは持っていたよりもさらに保守的な見解に至ることを示しています。リスキーシフトとコーシャスシフトがどちらの形式をとるかは、集団のメンバーの初期のリスクに対する傾向に依存しています。例えば、リスクを追求する性格を持つメンバーが多ければリスキーシフトが、リスクを回避する性格が優勢であればコーシャスシフトが発生します。

このように、両者は総じて「集団極性化現象（group polarization）」と呼ばれる現象に位置付けられ、リスクや決定が集団の内部でどのように変容するかを示す重要な概念です。

具体例

リスキーシフトの具体的な例として、インターネット上の自殺願望を持った人々の掲示板や、1962年のキューバ危機に関連する政治的決定などがあります。また、企業の経営においても、ワンマン社長とその取り巻きによる放漫経営が敗北を招く事例として挙げられます。これらの例は、集団が誤った方向に進むことがいかに多いかを示しています。

結論

リスキーシフトは、集団における意思決定過程がいかにして偏向するか、またそれが個人のリスク回避や挑戦的な傾向にどう関連しているかを理解する上で非常に重要な概念です。人々が集団で意見を交わす際には、時に思わぬリスクを背負うことに繋がるため、注意深く検討する必要があります。

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