リスク・アプローチ

リスク・アプローチとは

リスク・アプローチは、財務諸表監査における重要な手法で、世界中で広く利用されています。この手法は、監査リスクの低減を目的としており、現代の監査活動において基本的なモデルとして位置づけられています。

リスク・アプローチの概要

リスク・アプローチに基づく監査は、特定の手順に従って実施されます。具体的には、以下のステップが含まれます：
1. リスク評価手続き
監査リスクを評価し、重要な虚偽表示のリスクを特定します。
2. 発見リスクの水準決定
リスク環境に基づき、監査中に見逃してしまうリスクの水準を決定します。
3. 監査計画の策定
評価されたリスクに対処するための計画を立てます。
4. リスク対応手続き
計画に従って具体的な監査手続きを実施します。

これらの手順は、監査基準の「実施基準・基本原則」においても明確に示されています。

監査リスクの理解

監査におけるリスクは「監査リスク（Audit Risk: AR）」として知られ、財務諸表に重要な虚偽表示があり、それを見逃して誤った意見を表明する可能性を指します。この監査リスクは、重要な虚偽表示リスクと発見リスクの複合的な結果です。

• - 重要な虚偽表示リスク（Risk of Material Misstatement: RMM）

財務諸表において重要な虚偽表示が存在するリスクを指し、固有リスクと統制リスクから構成されます。

• - 固有リスク（Inherent Risk: IR）

企業の内部統制が存在しない場合に、重要な虚偽表示の可能性を表します。

• - 統制リスク（Control Risk: CR）

企業内部の統制が不十分で、重要な虚偽表示を防ぎきれないリスクです。

• - 発見リスク（Detection Risk: DR）

監査手続きによって重要な虚偽表示を見逃すリスクです。

これらのリスクがどのように組み合わさるかを理解することで、監査リスクを評価できます。監査リスクは以下の数式で表されます：

```
監査リスク = 固有リスク × 統制リスク × 発見リスク
監査リスク = 1 - 監査の保証水準
```

事業上のリスクを重視したリスク・アプローチ

事業上のリスクに着目したリスク・アプローチは、財務諸表全体レベルでの重要な虚偽表示のリスク評価に特に焦点を当てています。この手法は、企業及びその環境を深く理解することが求められます。特に、監査基準「実施基準・基本原則」においては、事業上のリスクを重視することが強調されています。

リスク・アプローチの意義

リスク・アプローチが日本に導入されたのは平成3年で、以下の二つの意義があります：
1. 効率的な資源配分
監査人は、限られた時間、人員、費用をより効率的かつ効果的に活用することができ、監査の失敗リスクを軽減できます。

2. 論理的な判断過程
監査人は、自らの判断過程をより明確に説明できるようになり、透明性が向上します。

また、平成17年の監査基準改訂により、事業上のリスクを重視したアプローチがさらに強調されました。

まとめ

リスク・アプローチは、監査の質を高めるための基本的かつ重要な手法であり、監査活動における信頼性を確保するために不可欠です。このアプローチを適切に理解し、運用することは、財務諸表監査の成功に直結します。

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