リップスティック (桜田淳子の曲)

「リップスティック」は、1978年6月に桜田淳子によってリリースされた、彼女のキャリアにおいて23枚目にあたるシングルです。

この楽曲の制作陣には、特筆すべき顔ぶれが揃っています。作詞は、桜田淳子のシングルとしては初めて松本隆が担当しました。そして作曲には、過去に「もう戻れない」を手掛けた筒美京平が、それ以来3作ぶりに携わっています。松本隆と筒美京平という、当時の歌謡界を牽引する二人のクリエイターが初めて本格的にタッグを組んだ点でも注目されました。

商業的な側面では、「リップスティック」は桜田淳子のシングルとして、重要な記録を持っています。オリコン週間シングルチャートおよびTBSテレビの人気音楽番組『ザ・ベストテン』において、彼女の楽曲がトップ10圏内にランクインした最後の作品となったのです。

特に『ザ・ベストテン』では、1978年6月29日の初ランクインから8月3日まで、実に6週間にわたって連続でチャートインを続けました。最高位は1978年7月6日放送回で記録した第8位でした。この7月6日の放送回は、番組史においても記憶される出来事がありました。司会の黒柳徹子とともに、ニューヨークから衛星生中継で番組に出演したのです。当時の技術では画期的な試みであり、この楽曲の注目度の高さを物語っています。

歌詞についても、ユニークな特徴が見られます。歌詞中には「山手線」という言葉が登場しますが、現在の一般的な読み方である「やまのてせん」ではなく、1971年3月6日の呼称変更以前に使用されていた「やまてせん」と歌われています。これは作詞家の松本隆が意図したものか、当時の一般的な発音に基づいたものかは定かではありませんが、楽曲に特定の時代の雰囲気を添える要素となっています。

この楽曲には、いくつかの異なる音源バージョンが存在します。例えば、ベストアルバム『ベスト・ヒット・アルバム』に収録されているバージョンは、シングル盤に比べてボーカルのテイクが異なり、アレンジも別ミックスとなっています。これらの違いは、紙ジャケット復刻盤のアルバム『ステンドグラス』に両方のバージョンが収められており、聴き比べることが可能です。

最も分かりやすい違いの一つとして、楽曲の冒頭部分、「…口紅だけ…」と歌われるフレーズの「け」の発音に違いが見られます。オリジナルシングルバージョンでは「け」の音がずり上げられるように歌われているのに対し、別テイクバージョンではそれがありません。また、現在CD化されているこの曲のカラオケバージョンは、このアレンジ別ミックスのバージョンに基づいています。

シングル盤に収録された楽曲は以下の2曲です。

リップスティック（4分14秒）
作詞：松本隆
作曲：筒美京平
編曲：筒美京平
トロピカル・ランデブー（3分30秒）
作詞：松本隆
作曲：筒美京平
編曲：萩田光雄

「リップスティック」は、桜田淳子のキャリアにおけるヒットチャートでの一つの区切りとなっただけでなく、松本隆・筒美京平という強力な制作布陣、特徴的な歌詞の読み方、そして異なる音源バージョンの存在など、多角的に語られるべき一曲と言えるでしょう。

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