リトアニアと中国の関係

リトアニアと中国の関係

リトアニアと中華人民共和国の関係は、近年、複雑な様相を呈しています。両国は国交を樹立していますが、チベット問題、ウイグル問題、香港国家安全維持法などの人権問題に対するリトアニアの懸念が、両国関係に大きな影響を与えています。リトアニアは、これらの問題で中国への不信感を募らせ、台湾（中華民国）との関係を強化する方向に舵を切っています。

中国への警戒感

リトアニアは、中国の経済的・政治的影響力の拡大を警戒しており、2019年には、国家安全保障上の脅威として中国を名指ししました。リトアニア国家保安局と国防省は、中国の情報機関がリトアニア国内で活発に活動し、国家安全保障に脅威を与えていると指摘しています。また、中国がリトアニアの重要インフラへの投資を進めることにも、安全保障上の懸念を示しています。

リトアニア政府は、中国の情報活動について、外交的偽装、孔子学院、中国企業、留学生などを利用していると警鐘を鳴らし、特にリトアニアがチベットや台湾の独立を支持しないよう圧力をかけていると指摘しています。

台湾との関係強化

リトアニアは、中国との関係が悪化する一方で、台湾との関係を強化しています。2021年には、台湾に貿易事務所を開設することを発表し、中国からの強い反発を受けました。さらに、リトアニア国会は、新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と認定する決議を可決し、香港国家安全維持法の廃止やチベット自治区への人権活動家の入国許可も求めました。

リトアニア政府は、新型コロナウイルス感染症対策のワクチンを台湾に提供するなど、台湾への支援を積極的に行っています。また、台湾がリトアニアに「駐リトアニア台湾代表処」を設置することを認め、中国との関係はさらに悪化しました。

中国の反発と制裁

中国は、リトアニアの台湾との関係強化や人権問題に対する批判に強く反発し、駐リトアニア中国大使を本国に呼び戻し、リトアニア政府に対して駐中国リトアニア大使の帰国を要求するなど、外交的な圧力をかけています。中国メディアは、リトアニアを「頭のおかしな小さな国」と非難し、リトアニアが台湾問題への関与を深めれば、断交に踏み切る可能性も示唆しました。

リトアニアが台湾代表処の名称を「台湾」としたことに対して、中国は「一つの中国」原則に反すると主張し、リトアニアに対して制裁措置を講じました。中国は、リトアニアからの輸入を制限し、リトアニア企業の中国での事業展開を妨害するなどの経済的な圧力をかけました。

リトアニアの立場

リトアニアは、「一つの中国」原則を尊重しつつ、台湾との関係を強化することを表明しています。リトアニア外相は、「リトアニアは独自の政策を続ける」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を示しました。また、リトアニアは、EUや世界の多くの国々と同様に、台湾と相互に有益な関係を追求すると強調しています。

リトアニア政府は、中国製スマートフォンにセキュリティー上の欠陥やデータ流出の恐れがあると警告し、公共機関や消費者に対し使用に注意するよう呼びかけました。また、中国が新疆ウイグル自治区での人権侵害を否定していることを批判し、国際社会に中国の人権状況を改善するよう働きかけています。

今後の展望

リトアニアと中国の関係は、今後も緊張状態が続く可能性があります。リトアニアは、台湾との関係をさらに強化し、中国の人権問題を批判し続けると予想されます。一方、中国は、リトアニアに対する圧力を強め、両国関係の悪化は避けられないかもしれません。

しかし、2023年11月には中国による制裁が解除されたことが発表され、両国関係にわずかながら改善の兆しが見え始めています。今後の両国関係の動向が注目されます。

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