リトル・アースクウェイクス

トーリ・エイモス『リトル・アースクウェイクス』：デビューアルバムの軌跡

1992年、米国のシンガーソングライター、トーリ・エイモスはソロデビューアルバム『リトル・アースクウェイクス』(原題: Little Earthquakes) を発表しました。このアルバムは、彼女独自の音楽性と詩的な歌詞で高い評価を受け、現在に至るまで多くの音楽ファンを魅了し続けています。2020年には権威ある音楽誌『ローリングストーン』が発表した「歴代最高のアルバム500選」において233位にランクインするなど、その名声は揺るぎないものです。

アルバム収録楽曲と制作秘話

『リトル・アースクウェイクス』には、後にシングルカットされた「ミー＆ガン(Me And A Gun)」、「サイレント・オール・ディーズ・イヤーズ(Silent All These Years)」、「チャイナ(China)」、「クルーシファイ(Crucify)」、「ウィンター(Winter)」など、彼女の代表曲が多数収録されています。それぞれの楽曲には、エイモス自身の体験や感情が深く反映されており、その制作秘話は興味深いものです。

クルーシファイ (Crucify): エイモスは、この曲のサビの部分を古いピアノで作曲し、録音した後、数ヶ月間忘れていたそうです。後に当時のパートナーであるエリックが偶然デモテープを発見し、改めて楽曲として完成させました。Plugged Tourでのライブバージョンは、後に『トゥ・ヴィーナス・アンド・バック』に収録されました。

サイレント・オール・ディーズ・イヤーズ (Silent All These Years): 24歳の頃、教会の裏に住んでいた時期に制作されました。ルームメイトの音楽が、祖母の記憶を呼び起こし、その記憶と葛藤が歌詞に反映されています。冒頭の歌詞「So I ran faster」が示すように、過去のトラウマからの逃避と葛藤が歌われています。ライブバージョンは『トゥ・ヴィーナス・アンド・バック』に収録されています。

プレシャス・シングス (Precious Things): この曲の制作背景については、エイモス自身の詳細なコメントは残されていませんが、彼女の複雑な感情や内面世界を反映した作品であることは間違いありません。

ウィンター (Winter): ライブバージョンが「パスト・ザ・ミッション」のカップリングに収録されました。

チャイナ (China): 作曲中に、不思議な感覚に陥り、まるで別の人生を体験したかのような感覚になったというエピソードがあります。

レザー (Leather): 制作秘話に関する情報は少ないですが、エイモスの初期作品らしい、独特の雰囲気を持つ楽曲です。

マザー (Mother): 早朝にインスピレーションが湧き、短時間で作曲されました。当時のパートナーの反応も、曲作りの過程に影響を与えたようです。ライブバージョンは「クルーシファイ」のカップリングに収録されています。

ティアー・イン・ユアー・ハンド (Tear in Your Hand): 親友のランツが勧めたニール・ゲイマンの小説「サンドマン」に影響を受け、歌詞にニール・ゲイマンの名前が登場しています。

ミー＆ガン (Me And A Gun): 自己破壊的な考えに苦しんでいた時期に制作され、3つのBメロを持つ複雑な構成になっています。ライブバージョンは『トゥ・ヴィーナス・アンド・バック』に収録されています。

リトル・アースクウェイクス (Little Earthquakes): アルバムタイトルと同名の楽曲。ライブバージョンは「プレシャス・シングス」と同様に「クルーシファイ」のカップリングに収録、そして『トゥ・ヴィーナス・アンド・バック』にも収録されています。

アルバムの意義

『リトル・アースクウェイクス』は、トーリ・エイモスの音楽家としての才能を世に知らしめた、重要な作品です。彼女の繊細で力強い歌声、詩的で複雑な歌詞、そして独特のピアノ演奏は、多くのリスナーに深い感銘を与え、現代音楽史に大きな足跡を残しました。このアルバムは、彼女の後の作品にも大きな影響を与え、その音楽的進化の礎となったと言えるでしょう。デビュー作にして完成度の高い作品であり、彼女のキャリアにおける重要なマイルストーンと言えるでしょう。

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