リナ・ラトケ

リナ・ラトケ：女性陸上競技のパイオニア、初代800m金メダリスト

リナ・ラトケ（Karoline "Lina" Radke-Batschauer、1903年10月18日 - 1983年2月14日）は、ドイツ出身の元陸上競技選手です。彼女は1920年代の女性陸上競技におけるパイオニアの一人であり、1928年アムステルダムオリンピックで初めて実施された女子800m競走で金メダルを獲得したことで知られています。

スポーツ黎明期における挑戦

リナ・ラトケは、現在のドイツ・バーデン＝ヴュルテンベルク州バーデンバーデンで生まれました。彼女が陸上競技を始めた当時、女性がスポーツをすること自体が珍しく、特に長距離走は女性にとって過酷であるという偏見が根強く残っていました。オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンも女性のスポーツ参加には否定的だったと言われています。そのような時代背景の中、ラトケは自身の情熱に従い、陸上競技の世界に足を踏み入れました。

女性が参加できる競技会は限られていましたが、ラトケは国内や地域レベルの大会で着実に成果を上げていきました。当初は1000mを専門としていましたが、1928年のアムステルダムオリンピックで女子800mが正式種目として採用されることになり、800mに転向しました。

アムステルダムオリンピックでの輝かしい勝利

リナ・ラトケの選手キャリアにおける最大のハイライトは、1928年アムステルダムオリンピックでの金メダル獲得です。この大会で、彼女は日本の人見絹枝選手との激しい競り合いを制し、見事初代女王に輝きました。この時、ラトケは800mの最初の公認世界記録となる2分16秒8を樹立しました。この記録は、なんと1944年まで破られることはありませんでした。

しかし、この決勝レースの様子は、国際オリンピック委員会（IOC）に衝撃を与えました。ゴール直後、参加した9選手全員が疲労困憊で倒れ込んだからです。IOCはこの光景を問題視し、オリンピックにおける女子800m競走は一時的に中止されることになりました。女子800mがオリンピックで再び実施されたのは、1960年のローマオリンピックまで待たなければなりませんでした。

その後

ラトケはその後も競技を続け、1934年まで現役選手として活躍しました。彼女の功績は、女性スポーツの発展に大きく貢献したと言えるでしょう。1983年、リナ・ラトケは生涯を閉じましたが、彼女の名前は、女性アスリートの先駆者として、陸上競技の歴史に深く刻まれています。

外部リンク: Olympedia - Lina Radke

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