リニアゲイル

リニアゲイル (Linear Gale)

リニアゲイルは、日本の東京都文京区に位置するアミューズメント施設、東京ドームシティアトラクションズにおいて、1998年から2010年まで運営されていたジェットコースター型アトラクションです。このコースターの特筆すべき点は、世界で初めて、車両がレールから吊り下がるインバーテッド（吊り下がり式）方式と、革新的な推進システムであるリニアモーターを組み合わせた構造を採用したことにあります。

このスリリングな乗り物は、かつて同じ場所に設置され、多くのゲストに親しまれた回転式コースター「ウルトラツイスター」の営業終了後、その跡地に建設されました。1998年7月に開業を迎えたリニアゲイルは、従来のジェットコースターのようにチェーンで時間をかけて高所に引き上げられる方式とは一線を画していました。スタート地点に設置された強力なリニアモーターが、車両を一瞬にして加速させ、短い助走区間ながらも最高速度へと到達させるという、非常にダイナミックな発進方式を実現しました。

コースレイアウトもまた、他に類を見ないものでした。全長は約200メートルと決して長くはありませんでしたが、車両はまず高さ50メートルまで垂直に近い傾斜で上昇し、その頂上付近から一気に落下。そのまま巨大なU字型のレールを駆け上がり、反対側の頂上近くまで達します。そして、勢いを失うことなくそのまま引き返し、再び元の方向へと進むという走行パターンを繰り返しました。このU字コースを、最高時速100kmという猛烈なスピードで、合計2.5往復するという独特な走行が、リニアゲイル最大の魅力でした。高速での往復運動は、乗客に強烈な加速Gや、頂上付近での独特の浮遊感（エアタイム）をもたらし、体験する人々に忘れられない印象を与えました。コースのすぐ隣には白山通りがあり、地上からでもその迫力ある走行を間近に眺めることができました。

アトラクション名「リニアゲイル」の後半部分「ゲイル（Gale）」は、英語で「疾風」を意味します。リニアモーターによる瞬時の加速と、風のように駆け抜けるスピード感を表現しており、その名前が示す通りの疾走感を体感できるコースターでした。製造を手がけたのは、スイスに本拠地を置き、世界各地で数々の革新的なライドを生み出しているアトラクションメーカー、インタミン社です。リニアゲイルもまた、インタミン社の高度な技術力の結晶と言えるでしょう。

しかしながら、この画期的なコースターは、比較的短い営業期間でその歴史に幕を閉じました。施設の老朽化が進行していたこと、そして翌年（2011年）に予定されていた隣接エリア「パラシュートランド」の大規模なリニューアル準備に伴い、2010年10月31日をもって惜しまれつつ営業を終了しました。約1分45秒という短い乗車時間の中に凝縮された、強烈な加速と高速往復によるスリルは、多くの絶叫マシンファンにとって忘れられない思い出となりました。

リニアゲイルへの乗車には、安全上の理由から一定の規定が設けられていました。身長130cm以上、年齢は10歳から65歳までの方が対象となり、その高速で強烈な走行特性に対応できることが求められました。

リニアゲイルの主要スペックは以下の通りです。

最高部高度: 50メートル
最高速度: 100km/h
最大傾斜角: 90度
コース全長: 200メートル
所要時間: 約1分45秒
製造メーカー: インタミン（スイス）

世界初の技術を搭載し、短いながらも極めて強烈なインパクトを残したリニアゲイルは、東京ドームシティアトラクションズの歴史において、確かに存在感を放っていた唯一無二のアトラクションだったと言えるでしょう。

もう一度検索