リピーター (時計)

リピーター：音で時を告げる複雑機構

リピーターとは、時計に搭載された機構の一つで、ボタンやレバーを操作することで、現在時刻を鐘の音で知らせる機能のことです。この機構は、暗闇や、懐中時計を取り出さずに時刻を知る必要があった時代に重宝されました。リピーターには、ウエストミンスターチャイムのように複数の鐘で音楽を奏でるものや、オートマタのように人形が動くもの、そして、ソヌリのように自動で時刻を知らせる機能と組み合わせたものも存在します。

歴史

リピーター機構は、1676年にイギリスのエドワード・バーロウによって発明されました。当初は、金属製のベルを複数搭載していたため、主に置時計などに使用されていました。しかし、1783年にアブラアム＝ルイ・ブレゲがリング状のゴングを発明し、懐中時計のムーブメントの外周に配置することで、小型化に成功しました。その後、この方式は広く用いられるようになり、1892年にはルイ・ブラン社（現在のオメガ）が初めて腕時計に搭載しました。

リピーターの種類と仕組み

リピーターには、15分単位で時を知らせるクオーター・リピーター、5分単位で知らせるファイブミニッツ・リピーター、そして1分単位で知らせるミニッツ・リピーターなどがあります。ミニッツ・リピーターは、通常、2つの異なる音色を使って、「時」、「四半時」（15分単位）、「分」を区別して知らせます。また、デシマル・リピーターと呼ばれる「時」、「10分」、「分」の3系統で時を告げるものも存在しますが、採用例は少ないです。近年では、A・ランゲ&ゾーネが「ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター」を発表しています。

三大複雑機構

リピーターは、機械式時計における三大複雑機構（リピーター、トゥールビヨン、永久カレンダー）の一つに数えられます。特に腕時計のミニッツ・リピーターは、非常に高度な技術を要し、ごく一部の熟練した時計職人にしか製作やメンテナンスができません。日本でも、セイコーの高級ブランドであるクレドールが2011年にデシマル・リピーターを採用したモデルを発表しています。

音色の重要性

リピーターの音色は、ケースが共鳴体として機能することで、素材や大きさ、厚みによって変化します。より良い音色を実現するためには、ケースの仕様も重要です。一般的に、硬い素材ほど音が大きくはっきり聞こえます。ケース素材には、18金のほか、プラチナ、セラミックなどが使われます。

クォーツ時計のリピーター

通常、リピーターは機械式時計に用いられますが、日本のシェルマンは1995年にシチズンの協力を得て、ミニッツ・リピーター機能を搭載したクォーツ腕時計「パーペチュアルカレンダー・ミニッツリピーター」を開発しました。シチズンも自社ブランド「カンパノラ」で同様の機能を搭載したモデルを販売しています。ただし、これらのクォーツ時計では、合成音によってゴングの音を再現しています。

防水性と音量の両立

従来のモデルでは、音を外に聞かせる構造上、防水機能を持たせることが困難でした。しかし近年では、各社が防水性と音量を両立させるための技術開発に取り組んでいます。例えば、オーデマ・ピゲは、ゴングを音響盤に取り付けて音を増幅させる技術を開発し、ショパールは、風防とゴングをサファイアクリスタルで一体成型する技術を開発しました。

まとめ

リピーターは、単に時刻を知るための機能を超え、時計製造における技術の粋を集めた複雑機構です。その美しい音色と精緻なメカニズムは、多くの時計愛好家を魅了し続けています。歴史的な背景や技術的な進歩を知ることで、リピーターの奥深さをより一層理解することができるでしょう。

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