リブレット (パーソナルコンピュータ)

東芝Librettoシリーズ：小型パソコンの歴史を彩る革新的モバイル

東芝（現Dynabook）が開発・販売していた「Libretto」シリーズは、モバイルコンピューティングの歴史において重要な位置を占める小型ノートパソコンです。1996年の初代モデル登場以来、世界最小・最軽量クラスのWindows搭載PCとして、常に注目を集めてきました。本稿では、Librettoシリーズの歴史と各モデルの特徴を詳細に解説します。

世界最小・最軽量への挑戦：Libretto 20の衝撃

1996年4月、Libretto 20が発売されました。東芝の最先端技術を結集したこのモデルは、VHSビデオテープと同等のサイズを実現。当時主流だったPDAやハンドヘルドPCとは一線を画す、本格的なWindows 95搭載PCとして登場しました。AMD Am5x86 75MHz（486DX 75MHz相当）CPU、8MBメモリ（最大20MB増設可能）、270MBの薄型2.5インチHDDを搭載。6.1インチTFT液晶と、親指操作のポインティングスティック「リブポイント」を採用し、モバイル性を追求していました。PCMCIA接続のフロッピーディスクドライブはオプションとして用意されました。リカバリメディアはユーザー自身で作成する必要があり、約50枚のメディアが必要だった点も特徴です。

着実な進化：Libretto 20以降のモデル

Libretto 20の成功を受け、その後継機が次々と発表されました。Libretto 30（1996年11月発売）ではCPUがDX4互換100MHzに強化され、HDD容量も500MBに増量されました。Libretto 50（1997年1月発売）からはIntel Pentium CPUを搭載、サウンド機能が追加され、外部ディスプレイ出力にも対応しました。Libretto 60、70とCPU性能とHDD容量は着実に向上し、Libretto 100（1998年3月発売）では液晶サイズが7.1インチに拡大し、筐体が大型化しました。Librettoシリーズは、デスクトップPCと同等のWindows環境を小型筐体に凝縮したことで、高い評価を獲得し、他社からの類似製品も登場するきっかけとなりました。

Dynabookシリーズとの融合と多様なモデル展開

Libretto SSシリーズ（1998年7月発売）では、Dynabook SSシリーズのデザインを採用。マグネシウム合金筐体と薄型HDDにより、更なる小型化が図られました。Libretto ffシリーズ（1999年7月発売）では、CMOSカメラやワイヤードリモコンといった新機能が追加され、よりパーソナルなモバイル体験を目指しました。Libretto Lシリーズ（2001年5月発売）は、「実用的で低価格なモバイルノート」をコンセプトに、Transmeta Crusoe CPUやワイド液晶を採用。B5ファイルサイズに近いコンパクトさでビジネスユースにも適したモデルとなりました。Libretto U100（2005年4月発売）は初代Libretto 20と同じ横幅を維持しながら、高度な小型化技術とPentium M CPUを搭載。Libretto W100（2010年8月発売）は、世界初の2画面タッチパネルを採用した革新的なモデルとして、シリーズの幕を閉じました。

特殊モデルと市場での人気

Librettoシリーズには、NTT DoCoMoとのコラボレーションモデル「Libretto MobilePack」シリーズや、生命保険会社向け特別モデル「Libretto 50M（愛称：ほほえみくん）」など、様々な特殊モデルが存在します。これらのモデルは、一般販売されていないため、中古市場で高値で取引されることも少なくありません。

Librettoシリーズの遺産

近年はレギュラーラインナップとしての継続的な開発販売は行われていませんが、Librettoシリーズは、その革新的な小型化技術とモバイルコンピューティングへの貢献は、現在でも高く評価されています。省電力型プロセッサの登場や、東芝のノートパソコン事業の節目を祝う販売戦略などにより、断続的に新製品が登場したことも、このシリーズへの変わらぬ関心の高さを示しています。Librettoシリーズは、小型パソコンの歴史において、一つの金字塔として記憶されています。

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