リポキシゲナーゼ

リポキシゲナーゼ：多価不飽和脂肪酸の酸化酵素

リポキシゲナーゼは、多価不飽和脂肪酸、特にリノール酸やα-リノレン酸を酸化する酸化還元酵素です。植物、動物、そして菌類など様々な生物種に広く存在し、脂質代謝や生体防御において重要な役割を担っています。

反応機構

リポキシゲナーゼは、酸素分子(O2)を用いて、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸の特定の位置に酸素原子を付加します。この反応は、ヒドロペルオキシ化と呼ばれ、脂肪酸の炭素鎖にヒドロペルオキシ基(-OOH)を導入します。例えば、リノール酸を基質とした場合、(9Z,11E)-(13S)-13-ヒドロペルオキシオクタデカ-9,11-ジエン酸を生成します。この反応は可逆反応ではなく、主に一方向に進みます。

基質特異性

リポキシゲナーゼは、基質となる多価不飽和脂肪酸の種類やその二重結合の位置によって、特異性を示します。大豆由来のリポキシゲナーゼはリノール酸を、亜麻仁由来のリポキシゲナーゼはα-リノレン酸を優先的に酸化することが知られています。また、酵素の種類によってヒドロペルオキシ基が付加される位置も異なります。

補因子

リポキシゲナーゼの活性発現には、[鉄]]イオン(Fe2+)とピロロキノリンキノン]という[[補因子が必須です。鉄イオンは酵素の活性中心に位置し、酸素分子の活性化に関与しています。PQQは電子伝達に関与し、反応の効率を向上させると考えられています。

生体における役割

リポキシゲナーゼの生体における役割は多岐に渡ります。植物では、病原菌に対する防御反応に関わったり、葉の老化や果実の成熟に関与するなど、植物の生育や環境応答に重要な役割を果たしています。動物では、炎症反応や血栓形成などに関与し、生理活性物質であるロイコトリエンやリポキシンなどの生成にも関与します。

歴史

リポキシゲナーゼに関する研究は古く、1940年代後半から活発に行われてきました。1947年には、Theorellらが大豆からリポキシゲナーゼの結晶化に成功しました。その後、1970年代には、Zimmermanらによる亜麻仁リポキシゲナーゼの基質特異性に関する研究や、Christopherらによる大豆リポキシゲナーゼの精製に関する研究などが発表され、酵素の性質や反応機構に関する理解が深まりました。これらの研究は、リポキシゲナーゼの生化学的性質の解明に大きく貢献し、その後の研究の発展に繋がる礎となりました。

まとめ

リポキシゲナーゼは、多価不飽和脂肪酸の酸化を触媒する重要な酵素です。植物、動物、菌類など様々な生物に存在し、生体内で多様な役割を果たしています。その反応機構、基質特異性、補因子、そして歴史的な研究成果を理解することは、脂質代謝や生体防御機構の解明に不可欠です。今後の研究により、リポキシゲナーゼの機能や作用機序が更に解明され、医療や農業分野への応用が期待されます。

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