リモージュ磁器

リモージュ磁器：フランスを代表する磁器の輝ける歴史

リモージュ磁器は、フランス中西部、リモージュとその周辺地域で生産される磁器の総称です。1771年を起源とし、現在までその伝統を守りながら、世界中にその名を知られています。

歴史：カオリンの発見から王室御用達へ

ヨーロッパにおける磁器生産は、18世紀初頭のドイツ・マイセンでのカオリン発見を機に始まりました。しかし、マイセンは製法を秘匿していたため、他地域での磁器生産は困難でした。フランスでも磁器生産の必要性は高まり、リモージュでは1736年に製陶所が設立されていましたが、磁器製造に必要なカオリンが不足していました。

転機となったのは1768年、サンティリエ＝ラ＝ペルシュでのカオリン発見です。この発見は、リモージュ磁器の歴史を大きく変えることになります。1771年、マシエとフルネラによってリモージュで最初の硬磁器が誕生しました。グルレ兄弟の資金援助とトゥルゴ知事の後押し、さらにアルトワ伯爵の保護を受け、「アルトワ伯爵製陶所」として発展しました。しかし、経営難から1784年にはフランス政府に買収され、セーブルの一部門となります。「リモージュ王立製陶所」と呼ばれた時期を経て、1788年には再び政府から売却されました。フランス革命による贅沢品製造禁止も、リモージュ磁器の初期発展を阻む要因となりました。

19世紀：技術革新と黄金時代

19世紀に入ると、リモージュでは技術革新が進みます。19世紀初頭には6つの製陶所がありましたが、1840年には30以上、1926年には48軒にまで増加しました。フランソワ・アリュオーは、リモージュ磁器の白さを向上させ、金属酸化物を用いた独自の着色技術を開発しました。

1842年、アメリカ人ダビド・アビランドがリモージュを訪れ、その磁器をアメリカに紹介しました。これがリモージュ磁器の輸出拡大、特にアメリカへの大量輸出に繋がり、「黄金時代」と呼ばれる19世紀後半の繁栄へと繋がります。1862年にはアビランド製陶所が設立され、ジャポニズムを取り入れた装飾など、新たなデザインも取り入れられました。1851年のロンドン万国博覧会や1878年のパリ万国博覧会への出品も、リモージュ磁器の国際的な評価を高めました。特に「プイヤ製陶所」のシンプルな食器は、リモージュ磁器の白さを象徴する存在となりました。石炭焼成技術や、白い生地に絵付けしてから焼き付ける技法の開発も、この時代の大きな進歩でした。アール・ヌーヴォー様式も取り入れられ、シカゴ万国博覧会に出品された作品は高い評価を受けました。

20世紀以降：新たな技術とデザイン

20世紀に入ると、「はめ込み技術」など新たな装飾技術が普及し、アール・デコ様式も取り入れられました。世界大戦の影響を受けながらも、戦後はアメリカ以外の国々への輸出が回復しました。フランス国内外のアーティストとのコラボレーションにより、新しいモチーフやフォルムが開発されました。現在では、パリやセーブルよりもリモージュがフランス磁器の中心地と見なされることも多く、その高品質な磁器は世界中で高く評価されています。

代表的な製陶所

リモージュ磁器を語る上で欠かせないのが、数多くの製陶所です。「アルトワ伯爵製陶所」、「ベニョル製陶所」、「アリュオー製陶所」、「プイヤ製陶所」、「リュオー製陶所」、「アビランド製陶所」、「テオドール・アビランド製陶所」など、それぞれ独自の技術やデザインでリモージュ磁器の歴史を彩ってきました。これらの窯元は、技術革新やデザインの多様化に貢献し、リモージュ磁器の世界的な成功を支えました。

リモージュ磁器の原料と製法

リモージュ地方は、カオリン、長石、石英などの磁器製造に必要な原料が豊富に存在しました。サンティリエ＝ラ＝ペルシュ、Marcognac、Chantreloube、サン＝ポール＝ラ＝ロッシュなど、多くの産地が原料供給に貢献しました。焼成は摂氏1400～1450度で行われ、上絵付けは950～1000度で行われます。この製造方法は、イギリスのボーンチャイナとよく似ています。豊富な木材資源も、高温焼成を可能にしました。

骨董としての価値

初期のリモージュ磁器、特に花をモチーフとした装飾と、微妙に黄色がかった素地を持つ作品は、コレクターの間で高い価値を持っています。リモージュ磁器は、その歴史、技術、デザインの全てにおいて、フランス磁器の頂点に位置する存在と言えるでしょう。

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