リュッツェンの戦い (1632年)

リュッツェンの戦い

リュッツェンの戦い（Schlacht bei Lützen）は、三十年戦争の一環として1632年11月16日（旧暦11月6日）に行われました。この戦闘は、ドイツのリュッツェン近郊で、スウェーデン軍とその連合軍が神聖ローマ帝国軍と激突したものであり、戦後のヨーロッパの勢力図に大きな影響を及ぼしました。この戦いの最大の特徴は、スウェーデン王グスタフ・アドルフが戦死したことで、戦局が一変した点です。

戦闘の背景

リュッツェンの戦いの前の状況は、戦争の膠着状態が続いていました。神聖ローマ皇帝フェルディナント2世は、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインを再び皇帝軍の指揮官に任命し、彼は急速に傭兵を動員して優勢だったスウェーデン軍に対抗しようとしました。プロテスタント軍は、ニュルンベルクに集まって皇帝軍との決戦を試みましたが、ヴァレンシュタインの戦略的な動きにより膠着状態が続きました。

プロテスタント軍にとってフュルトの戦いでの敗北は、軍事的な損害よりも政治的な影響が大きく、その結果、多くのドイツ諸侯が皇帝側に傾く事態となりました。しかし、ヴァレンシュタインはプロテスタント軍の動きに気付き、先手を取るためにザクセンへ攻撃を仕掛ける準備を進めました。

戦闘準備

グスタフ・アドルフは、ザクセンの救援に向かう途中で、ヴァレンシュタインの部隊がリュッツェンに展開していることを知ります。11月14日にリュッツェンに到着した皇帝軍は、野営陣地を設けて待ち受けました。プロテスタント軍も集結し、両軍の布陣が整いました。

プロテスタント軍は約12,800名の歩兵、6,200名の騎兵、60門の大砲を配置し、中央に重砲を備えた歩兵戦列を二列に並べ、その両翼には騎兵が配されました。対する皇帝軍は、約10,000名の歩兵と7,000名の騎兵、24門の大砲で防御陣地を築き、両翼に騎兵を配置しました。

戦闘の経過

戦闘は11月16日の霧深い早朝に開始されました。霧が晴れた午前11時頃、グスタフ・アドルフは攻撃を命じ、プロテスタント軍が前進を開始します。プロテスタント軍は中央の皇帝軍を押し込み、陣地を奪おうとしますが、ヴァレンシュタインも騎兵隊を率いて反撃し、押し返します。

戦況が厳しい中、グスタフ・アドルフは自ら騎兵隊を率い、戦場へ突進しますが、視界の悪さから敵に囲まれてしまいます。ついには負傷し、戦闘中に戦死します。この情報は戦場に混乱をもたらし、プロテスタント軍は一時的に動揺しましたが、指揮官たちの奮闘により、再び戦闘に戻ります。

午後には、ヴァレンシュタインの増援部隊が戦場に到着し、局面が再び変わります。プロテスタント軍は度重なる攻撃を試みては撃退されますが、最終的には中央陣地を制圧し、全ての大砲を奪うことに成功します。

午後6時、暗くなりつつある中、ヴァレンシュタインは整然と後退を開始し、プロテスタント軍はこれを追撃しませんでした。戦いはこうして終結し、プロテスタント軍が勝利を収めたものの、非常に高い犠牲を伴うものでした。

戦闘の影響

この戦いの結果、死傷者は9,000名を越え、特にスウェーデン軍は大きな損害を被りました。グスタフ・アドルフという指導者を失ったことは、プロテスタント陣営にも多大な打撃となり、スウェーデンは以後の戦局で劣勢に立たされることになります。グスタフ・アドルフの死後、スウェーデンは新たなリーダーシップや外交戦略を模索しましたが、戦局の流れは変わることなく、ネルトリンゲンの戦いで敗北を喫しました。

ヴァレンシュタインもまた、グスタフ・アドルフの死により自身の立場が難しくなり、その後の暗殺の遠因となったのではないかとされています。このようにリュッツェンの戦いは、三十年戦争の趨勢を決定づける重要な転機であり、スウェーデンの大国時代の基礎を築くことになりました。

結論

リュッツェンの戦いは戦術的にも戦略的にも意義深いものでした。戦闘には勝利したものの、スウェーデンとしては貴重な指導者であるグスタフ・アドルフを失ったため、その後の戦局に長期的な影響を及ぼす結果となりました。

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