リング・リング・リング

『リング・リング・リング』は、劇作家つかこうへいによって生み出された、女子プロレスを題材とした作品群です。1991年に戯曲として発表され、その後小説化、映画化されました。この作品は、単なるプロレスを題材にした物語ではなく、愛、葛藤、そして自己実現といった普遍的なテーマを、女子プロレスの世界を舞台に描いています。

概要

物語の中心となるのは、幼い子供を抱えながらチャンピオンを目指す女子プロレスラーの姿です。彼女は、愛する人との関係、母親としての責任、そしてプロレスラーとしての自己実現の間で揺れ動きます。この複雑な感情の動きが、観客や読者の心を強く惹きつけます。

1993年に映画化された際には、実際のプロレス会場を使用し、プロレスファンを観客として動員するという、当時としては斬新な手法が用いられました。この映画で主演を務めた長与千種は、撮影中に多くのファンから熱狂的な支持を受け、「まだ動ける」という確信を得てプロレス界への復帰を決意しました。この復帰は、多くのプロレスラーの復帰を促す大きな転機となりました。

解説

この作品は、つかこうへいが長与千種に惚れ込み、彼女のために書き下ろしたオリジナル作品です。つかは、この作品を自身の代表作である『蒲田行進曲』の続編として捉えていたと言われています。また、舞台版、小説版、映画版で結末が異なるのは、つか自身の意向によるもので、映画版では「結末が余りにも重く辛すぎるのでそれを映像にするのは心が痛んで出来なかった」と語っています。

主人公のキャラクターは、長与千種をモデルにしている部分が多く見られますが、あくまでフィクションであり、長与千種自身がフィクションの主人公を演じるという構造になっています。舞台版では、1991年の初演時に2つの演出パターンが存在し、千秋楽では、それまでのラブシーンの演出から、キャスト紹介とダンスシーンに変更されました。

あらすじ

物語は、主人公である千種が、義父をプロレス技で殺害してしまうという衝撃的な展開から始まります。千種の才能を見抜いたコーチの万作は、彼女をプロレスラーにするため身代わりとなり服役します。プロレスラーとしてデビューするために上京した千種を追って、幼馴染の刑事・亀田も上京します。服役を終えた万作は、千種が別の男と結婚し、子供を産んでいたことを知り衝撃を受けます。病弱な娘を抱えながらもプロレスに打ち込む千種。タイトルマッチの当日、娘は亡くなり、若原は千種を責めます。しかし、千種はプロレスラーとしての道を選び、リングに向かいます。

登場人物

主な登場人物は、女子プロレスラーの千種、彼女の才能を見抜き身代わりとなるコーチの万作、千種を慕う幼馴染の刑事の亀田、千種の夫でありレフリーの若原などです。これらのキャラクターたちの複雑な人間関係が、物語に深みを与えています。

各メディア展開

舞台

1991年の初演以降、様々な劇団によって再演されており、2016年にはつかこうへいの七回忌追悼特別公演も行われました。舞台版では、演出やキャスティングによって、作品の解釈や印象が異なっています。特に、初演時の主演を務めた長与千種は、その後の様々な舞台版でも重要な役割を果たしました。

小説

小説版では、舞台版とは異なる結末が描かれています。千種が結婚を強要されたり、出産後に娘を亡くすなどの壮絶な展開が描かれます。しかし、最終的にはリングに戻ることを決意します。小説版は、より深く主人公の葛藤を描き出しており、読者に強い印象を与えます。

映画

映画版は、実際のプロレス会場をロケ地とし、プロレスファンを観客として撮影するというリアルな演出が話題となりました。長与千種本人が主演を務め、彼女のプロレスラーとしての魅力が最大限に引き出されています。映画版では、千種がプロレスへの情熱を再燃させ、自らの道を切り開いていく姿が描かれています。

まとめ

『リング・リング・リング』は、つかこうへいの独特の作風と、女子プロレスという特異な世界観が融合した、非常に魅力的な作品です。舞台、小説、映画と様々な形で展開され、それぞれが異なる魅力を放っています。特に、長与千種の存在は、この作品に大きな影響を与えており、彼女のプロレスラーとしての力強さと、女性としての繊細さが、作品に深みを与えています。この作品は、時代を超えて、多くの人々に愛され続けています。

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