リング0 バースデイ

『リング0 バースデイ』は、2000年1月22日に公開された日本のホラー映画です。シリーズの完結編にして、前日譚という位置づけで、それまでの謎を解き明かす重要な作品となっています。

物語の舞台は1968年、昭和43年。

主人公である山村貞子は、18歳で東京の劇団「飛翔」に入団していました。この劇団は、次の公演「仮面」の上演に向けて準備を進めていました。しかし、公演開始を目前に奇妙な出来事が起こり始めます。劇団員たちは皆、不気味な井戸の夢を見るようになり、その夢に苛まれていくのです。そして、公演の練習中に主演女優の葉月愛子が謎の死を遂げます。

その直後、貞子は疑いの目を向けられます。しかし、音効係の遠山博は貞子を庇い、一方、衣装係の立原悦子は、貞子と遠山に距離を置くよう警告します。

一方、12年前の山村志津子の超能力実験で婚約者を失った新聞記者の宮地彰子は、その事件の真相を追っていました。彼女の調査は、貞子の過去へと繋がっていきます。そして、彼女は貞子の小学校時代の教師から、驚くべき事実を聞かされます。「もう一人の貞子」の存在です。

劇団「飛翔」は、演出家の重森勇作の指導のもと、山村貞子を新たな主演女優に据え、「仮面」の上演を決行します。しかし、復讐に燃える宮地の策略により、貞子が過去に人を呪殺した事実が、多くの観客の前で暴かれてしまいます。貞子を守るため、遠山は重森と揉み合いになり、結果的に重森を殺害してしまいます。

この事件をきっかけに、劇団はパニックに陥り、貞子を殺害しようとします。その後、彰子と劇団員たちは、貞子の父親とされる伊熊平八郎の元へと向かいます。伊熊は、かつて貞子から分離された「もう一人の貞子」を匿っていました。彰子たちは、そのもう一人の貞子を殺害しようと試みます。

しかし、殺されたはずの貞子は蘇生し、劇団員たちは次々と貞子によって呪殺されていきます。この事件に巻き込まれた彰子、そして貞子と心を通わせた遠山も、貞子の制御できない超能力によって命を落としてしまいます。絶体絶命の状況に追い詰められた宮地と悦子は、拳銃自殺を選ばざるを得ませんでした。

暴走する貞子を止めるため、伊熊は悲しみに暮れる貞子を井戸へと突き落とし、井戸に蓋をします。

遠山と心を通わせた頃の幸せな夢から覚めた貞子は、自分が井戸の底に閉じ込められようとしていることに気がつきます。貞子の怨嗟の絶叫とともに、映画は幕を閉じます。

この映画は、鈴木光司の短編小説集『バースデイ』に収録された「レモンハート」を原作としています。しかし、映画版では、原作とは異なる部分も多く、貞子のキャラクター像や物語の展開に大きな変更が加えられています。

特に、貞子は原作のような「魔性の女」ではなく、自身の宿命を知らぬ「普通の人間」として描かれています。そして、幼少期に似た化物である「もう一人の貞子」が登場するなど、原作にはない要素も盛り込まれています。

また、映画では、昭和43年の時代設定や、限られた予算の中で、撮影は多くの苦労を伴ったというエピソードも残されています。仲間由紀恵が演じた山村貞子役は、彼女にとって転機となり、女優としての地位を確立するきっかけとなりました。

『リング0 バースデイ』は、単なるホラー映画としてだけでなく、貞子の悲劇的な人生とその背景、そして彼女を取り巻く人々の葛藤を描いた人間ドラマとしても高い評価を受けています。シリーズ全体を通しても、この作品は特別な位置づけにあると言えるでしょう。

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