リンダ・トマス＝グリーンフィールド

リンダ・トマス＝グリーンフィールド氏（Linda Thomas-Greenfield）は、1952年11月22日にアメリカ合衆国ルイジアナ州ベイカーで誕生しました。日雇い労働者の父と調理師の母のもと、8人兄弟の長子として育ちました。

彼女は学業に励み、1974年にルイジアナ州立大学を卒業。翌年にはウィスコンシン大学マディソン校で公共経営の修士号（MPA）を取得しています。大学で政治学を教えた後、1982年に国務省に入省し、外交官としての長いキャリアをスタートさせました。

国務省では多岐にわたる要職を歴任しました。初期にはスイス（国際連合アメリカ合衆国代表部）、パキスタン、ケニア、ガンビア、ナイジェリア、ジャマイカといった世界各地に駐在し、国際情勢に関する幅広い経験を積みました。特に重要な役職としては、人口・難民・移民問題担当国務次官補（2004年～2006年）、アフリカ担当第一国務次官補（2006年～2008年）を務め、人道問題やアフリカ地域への深い関わりを示しました。その後、駐リベリア大使（2008年～2012年）として一国の外交代表を務め、帰国後は外交局長兼人的資源部長（2012年～2013年）として国務省内の組織運営にも携わりました。再びアフリカ担当国務次官補（2013年～2017年）として、オバマ政権における対アフリカ政策の中枢を担いました。

2017年1月20日、ドナルド・トランプ政権が発足すると、国務省の上層部で人事の刷新が行われ、彼女も公職を離れることとなりました。その後、ジョージタウン大学に移り、2017年秋から2019年春にかけてアフリカ研究の特別研究員として在籍しました。現在も同大学の非常勤研究員として、研究活動を継続しています。

2020年11月にジョー・バイデン氏が大統領選挙での勝利を確実にすると、トマス＝グリーンフィールド氏はそれまで上級副社長を務めていた民間コンサルティング会社、オルブライト・ストーンブリッジ・グループを退職し、国務省関連の政権移行を支援する再検討チームに参加しました。同年11月24日、バイデン次期大統領から次期国際連合大使に指名されました。

2021年1月27日に行われた上院外交委員会での指名承認公聴会では、過去に中国政府が支援する孔子学院で講演したことについて、後悔の念を表明しました。また、外交政策の大部分についてバイデン政権の路線を支持しつつ、アフリカ諸国などにおける中国の軍事力の拡大や「借金漬け」外交戦術に対する強い懸念を示しました。パレスチナ問題については、ボイコット、投資撤収、制裁（BDS）運動を反ユダヤ主義とみなし、イスラエルが不当に非難される状況に反対する立場を明確にしました。

国際連合大使への人事案は、2021年2月23日に上院本会議で採決が行われ、78票対20票の賛成多数で承認されました。この指名承認が一部遅れた背景には、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員が、彼女の過去の孔子学院での講演内容を問題視したことが影響したと報じられています。上院での承認を経て、彼女は2021年2月25日に信任状を捧呈し、アメリカ合衆国の第31代国際連合大使に正式に着任しました。

国連大使着任後間もない2021年3月1日には、慣例に従い、その月の安全保障理事会の議長を務めました（同月末まで）。

外交官としての実務経験に加え、彼女は学術的な貢献も行っています。難民問題に関する論文や、ジンバブエの政治情勢、あるいは外交の変革や国務省改革に関する共著論文などを発表しており、その知見は広く共有されています。

リンダ・トマス＝グリーンフィールド氏は、長年にわたる豊富な実務経験と、複雑な国際問題への深い理解を持つ外交官として、現在、国際連合の舞台でアメリカ合衆国の外交政策を推進する重要な役割を担っています。

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