リール宮殿美術館

リール宮殿美術館は、フランス北部、ノール県の主要都市リールに所在する市立美術館です。その規模はフランス国内でも有数であり、ヨーロッパ美術の重要なコレクションを所蔵しています。

美術館の歴史

19世紀初頭、ナポレオン1世は美術の普及を目的として、勅令により各地に美術館の建設を命じました。リールもその一つに選ばれ、1801年の指令に基づき、教会や軍の占領地域から押収された美術品が収集されました。当初のコレクション整理は、画家ルイ・ジョセフ・ワトーによって行われ、その後、彼の息子であるフランソワ・ワトーが1808年から1823年まで副キュレーターを務めました。

美術館は1809年に開館しましたが、当初は接収された教会の建物が利用されていました。その後、美術館は市の施設に移転し、コレクションの拡充が進められました。1866年には、ジャン＝バティスト・ウィカーの個人コレクションを基にした「ウィカー美術館」が統合され、収蔵品はさらに充実しました。

現在の美術館の建物は、ベル・エポック様式を代表する壮麗なものです。この建物の建設は、当時のリール市長ゲリー・レグランの主導により、1885年に始まり、1892年に完成しました。設計は、パリ出身の建築家エドゥアール・ベラールとフェルナン・エティエンヌ＝シャルル・デルマが担当しました。美術館は、リール市中心部のレピュブリク広場に面しており、その美しい外観は街の景観に彩りを添えています。

1990年代には、大規模な改修工事が行われ、1997年に再オープンしました。この改修によって、地下に700平方メートルのスペースが新設され、特別展やレリーフ、19世紀の彫刻作品などの展示に活用されています。

美術館のコレクション

リール宮殿美術館の総面積は22,000平方メートルに及び、2015年現在、72,430点もの美術品を収蔵しています。そのコレクションは、ルネサンスから19世紀までのヨーロッパ美術を網羅しており、絵画、彫刻、素描、工芸品など、多岐にわたります。

特に著名な画家の作品としては、ラファエロ、ドナテッロ、ヴァン・ダイク、ジェームズ・ティソ、ヨルダーンス、レンブラント、ゴヤ、エル・グレコ、ダヴィッド、コロー、クールベ、トゥールーズ＝ロートレック、ドラクロワ、ルーベンス、ロダン、カミーユ・クローデル、シャルダンなどが挙げられます。これらの巨匠たちの作品を通じて、それぞれの時代や流派の美術様式を深く理解することができます。

美術館の魅力

リール宮殿美術館は、単に美術品を鑑賞するだけでなく、その歴史的建造物としての魅力も兼ね備えています。ベル・エポック様式の壮麗な建物は、美術品と同様に訪れる人々を魅了します。また、地下に設けられた展示スペースでは、企画展なども開催され、何度訪れても新しい発見があります。

アクセス

リール宮殿美術館は、リール市中心部のレピュブリク広場に位置しており、公共交通機関を利用して容易にアクセスできます。周辺には、他の観光スポットやレストランなども多く、観光の拠点としても便利です。

美術館の公式サイトでは、詳しい開館時間や展示情報、イベント情報などが提供されています。公式サイトはフランス語と英語に対応しており、事前に情報を確認することをお勧めします。

リール宮殿美術館は、その豊かなコレクションと美しい建物を通じて、訪れるすべての人々に芸術の感動と歴史の魅力を伝えています。

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