ルイ・ル・プランス

ルイ・エメ・オーギュスタン・ル・プランス：映画の先駆者

ルイ・エメ・オーギュスタン・ル・プランス（Louis Aimé Augustin Le Prince, 1841年8月28日 - 1890年9月16日失踪）は、世界で初めて映画を撮影したとされるフランスの発明家です。彼は1930年代から「映画の父」と呼ばれ、映画史において重要な人物として認識されています。ル・プランスはフランス生まれですが、イギリスやアメリカでも活動し、革新的な発明を成し遂げました。

映画の発明

1888年10月、ル・プランスはイングランドのリーズで、単レンズカメラとイーストマンの紙フィルムを使用し、世界初の映画となる映像を撮影しました。この「ラウンドヘイの庭の場面」と「リーズ橋の場面」の撮影は、リュミエール兄弟やトーマス・エジソンといった他の発明家よりも数年先駆けており、彼の先見の明を示しています。

忘れられた発明家

ル・プランスは1888年に映画用カメラと映写機を兼ねた16レンズ機器の特許をアメリカで取得しましたが、単レンズ型機器の特許は却下されました。しかし、数年後にはトーマス・エジソンがほぼ同じ特許を取得しました。ル・プランスは1888年10月14日に改良した単レンズカメラ（MkII）で「ラウンドヘイの庭の場面」を撮影し、その成果を家族に披露しましたが、一般公開には至りませんでした。1890年にニューヨークで予定されていた一般公開も、彼の失踪によって中止され、ル・プランスの映画への貢献は長い間忘れられていました。

生涯

生い立ち

1841年8月28日、フランスのメスで生まれたル・プランスは、幼少の頃から写真の先駆者であるルイ・ジャック・マンデ・ダゲールのスタジオに出入りし、写真や化学について学びました。その後、パリで絵画を学び、ライプツィヒ大学で化学を修めました。

成年後

1866年、ル・プランスは大学時代の友人ジョン・ホワイトリーに招かれ、イギリスのリーズに移住し、ホワイトリー家の会社に就職しました。1869年にはジョンの妹であるエリザベスと結婚。1871年には夫婦で応用芸術の専門学校を設立し、写真を金属や陶磁器に定着させる技法で知られるようになりました。1881年からはホワイトリー・パートナーズの代理人としてアメリカにも滞在し、複数の芸術家と共にパノラマ画の制作・展示会を行いました。アメリカ滞在中に、16個のレンズを使ったカメラの特許を取得しましたが、映像の動きは滑らかではありませんでした。

単レンズカメラの開発

1887年5月にリーズに戻ったル・プランスは、単レンズカメラを開発し特許を出願しました。1888年10月14日には、このカメラで撮影した「ラウンドヘイの庭の場面」が世界初の映画とされています。その後、リーズ橋の様子も撮影し、これらの映像はリーズで上映され、世界初の上映会となりました。

失踪事件

1890年9月、ル・プランスはアメリカで新カメラを売り込む旅の後、イギリスに戻る途中、フランスで失踪しました。9月16日にパリに向かう列車に乗りましたが、その後の消息は不明です。彼の荷物や遺体は発見されず、謎の失踪事件として扱われました。警察や家族による捜索も行われましたが、手がかりは見つかりませんでした。様々な憶測が飛び交い、自殺説、特許紛争に絡む暗殺説、家族を隠すための偽装失踪説、兄弟による殺害説などが提唱されました。

失踪に関する諸説

完全な自殺説: ル・プランスが経済的に破綻寸前で自殺を考えていたという説。しかし、ル・プランスの事業は成功しており、自殺の動機が見当たらないとされています。
特許紛争に絡む暗殺説: ル・プランスの家族がエジソンを疑っていたという説。しかし、証拠は何もありませんでした。
家族のために身を隠した説: ル・プランスが経済的に破綻し、家族を守るために自ら身を隠したという説。しかし、ル・プランスが経済的に破綻していたという事実はありません。
金銭がらみの兄弟殺し説: 最後にル・プランスを目撃した兄弟が、彼の自殺をなぜ止めなかったのかという疑問から、兄弟による殺害説が提唱されています。

後世の評価

多くの映画史家は、ル・プランスを「映画の真の父」と位置づけています。彼の業績は、長年の間忘れ去られていましたが、近年再評価が進んでいます。1930年12月12日には、リーズ市長によってル・プランスの工房跡に記念銘板が設置されました。

ル・プランスのカメラと映写機

LPCC Type-16: 16レンズカメラ。フレームレートは毎秒16フレーム。
LPCCP Type-1 MkI: 単レンズカメラMkI。フレームレートは毎秒10から12フレーム。
LPCCP Type-1 MkII: 単レンズカメラMkII。フレームレートは毎秒20フレーム（調整可能）。
LPP Type-3: 3レンズ式映写機。

現存する作品

ル・プランスの作品は、失踪と共に失われたと思われていましたが、後にカメラの中から一部が発見されました。現存する作品は以下の通りです。

街角を歩く男 (LPCC Type-16): 16レンズ型カメラで撮影された唯一の作品。
ラウンドヘイの庭の場面 (LPCCP Type-1 MkII): 1888年10月14日に撮影された、世界初の映画とされる作品。
リーズ橋 (LPCCP Type-1 MkII): リーズ橋を撮影した作品。
アコーディオン奏者 (LPCCP Type-1 MkII): 息子のアドルフがアコーディオンを演奏する様子を撮影した作品。

ル・プランスは、1890年9月16日の失踪まで、映画技術の発展に大きく貢献しました。彼の業績は、後の映画史に多大な影響を与えましたが、その生涯は謎に包まれています。

脚注

参考文献

Pfend Jacques: Louis Aimé Augustin Leprince,pioneer of the moving picture,and his family.(Sarreguemines,2009).

関連項目

ルイ・ジャック・マンデ・ダゲール
* エドワード・マイブリッジ

外部リンク

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